少し意地悪なことを言ってしまったが、島野さんは率直に答えてくれた。日本の自転車保険は基本的にウーバーイーツなどの個人事業主によるオンラインフードデリバリーサービスを想定していなかった。かといって個人の副業で施設賠償責任保険に入るのは現実的ではない。筆者としてはまだ普通自動二輪小型限定(道路運送車両法の区分は原付2種)を使うほうが自転車よりリスクが少ないと考える。プレス便やバイク便など自動二輪はその歴史的過程で業務使用も補償される個人の任意保険が整備されてきた。しかし自転車は個人の民間自転車保険や先のベネフィットプランがあるにせよ、個人事業主としての商用利用には心もとないのが現状だ。
それを踏まえれば、小さな子どもを持つ親の苦労はわかるが、幼児2人同乗基準適合車マーク(BAAマーク)が貼ってあったって、ママチャリで子連れウーバーなんて本当にやめたほうがいい。これもウーバージャパンに同乗者に関する質問を文章で送り回答を得たが、補償対象となるのは配達パートナー本人、それぞれの自賠責保険会社の判断とのことだった。自賠責の対象ですらない自転車は自転車保険の各約款を見る限り、商用使用となると先の施設賠償責任保険などのような法人契約の特殊な保険でもなければ、ましてや従事外の同乗者に対する補償となると難しいだろう。
配達パートナーの同乗者規定に関してはさらに、ウーバージャパンは「同乗者についての何らかの施策というご質問につきましては、今のところ予定しておりません」と回答した。完全自己責任だ。ウーバーイーツで配達員に従事する親御さんは自己の責任のもと、どうか大切なお子さんを巻き込まないでほしい。そしてこの自己責任のリスクは個人事業主である配達員に頼んだ”依頼主”である注文客にも転嫁されるかもしれない。“貴殿は、Uberがデリバリー等サービスを提供するものではなく、全ての当該デリバリー等サービスはUber又はその関連会社により雇用されていない独立した第三者の契約者により提供されることを了承することとします”と規約にきちんと書いてある。注文客は利用者というだけでなく、一時的な使用者でもあるのだ。
「ベトナム人なんか“なりすまし”も多いし事故ったらバックレか開き直りですよ。何を言われたって気にしないでしょう」
先程からの“なりすまし”という言葉、あらためて聞けばアカウントを大量に作ってリクエストを誰より先に受け、そのアカウントとは違う人物が配達する行為らしい。
「面接も研修もないですからね、一応ウーバーに身分証とか写真をアップしますけど、そんなの本人確認になってませんよね」
自転車のイメージが悪くなってしまう
ウーバーイーツは店と客に配達パートナーの顔写真が確認のために送られるシステムだが、似ても似つかない別人がやって来ることがある。それが外国人の配達員には目立つということなのだが、ベトナム人の技能実習生であれば、彼らは生きるのがやっと、日本に来るのに多額の借金をしている者も多い。神戸の事件をきっかけに警察も動く状況下、ウーバージャパンも12月4日から外国人に対しては在留カードとパスポートの現物確認を始めた。ウーバー配達員の外国人はそれらを持って各地のコンプライアンスセンターに実際に来いというお達しで、事実上の面接のようなものか。
「私からすれば、そもそもウーバーなんて気軽にやるもんだと思うんですよね。生き死にかけるもんじゃない」