ライフ

漫画『おうちで死にたい』作者 看取りのテンプレートはない

『おうちで死にたい』

『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』5巻(C)広田奈都美(秋田書店)

 高齢化が進む日本社会。身近な人を自宅で“看取る”機会も増えてくるだろう。『おうちで死にたい』というタイトルで、患者や家族に寄り添う訪問看護師たちを題材にした漫画を描いている広田奈都美さんはこう話す。

「ほとんどの人が“死ぬならおうちがいい”と思っているんです。特に高度経済成長期を謳歌した高齢者にとって家は特別なステータス。おうちでこそ自分らしくいられる」(広田さん・以下同)

 なかでも、コロナ禍で自宅看取りになる人が多いという。

「家族は大変。でも自宅を舞台にすると、家族がご本人と一緒に“死を受け入れるプロセス”を共有できるんですね。もちろん医師や看護師が支えるのですが、家族自身が“私が看取るんだ”って、どんどんたくましくなっていく。その姿は感動的です。やり遂げた後はみんな“やってよかった”と言われます」

 病院の緩和ケア病棟なども、自宅看取りのよさを重視して、家族が泊まれるようにするなどの工夫をしているという。

「“これがよい看取り”というテンプレートはありません。家族に囲まれたいという人、ひとりだけで静かに死にたいという人、逝く人が台本を書いているのではと思うほど、自然とその人らしい看取りの形になる。そんないろいろ形があることを、この漫画で伝えたいのです」

 そしてもう1つ広田さんが描きたいのは、医師や看護師の並々ならぬ葛藤だ。

「看取りをする医療者の心の負荷は大きい。不安な患者さんや家族に寄り添い、これでよかったのかな?と自問の連続。患者さんが水も受け付けなくなると、そろそろ亡くなるなというのもわかる。命から、言葉にならない大きなものを学んでいます」

『おうちで死にたい』シリーズからは看取りにかかわる人々のリアルな心模様が伝わってくる。ぜひご一読を!

【プロフィール】
広田奈都美さん/静岡県出身。漫画家デビュー後、映画『生きる』に影響を受けて看護師になり、病院勤務のかたわらで執筆。現在はコロナ禍の看護師たちの奮闘を取材中。看護師サイト『看護roo!』ほか、『月刊フォアミセス』で連載中。

取材・文/斉藤直子

※女性セブン2020年12月24号

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン