ハイブランドで知られる「ドルチェ&ガッバーナ」(以下ドルガバ)が歌詞に出てきたからだ。ドルガバの香水について歌っているのだが、一体どんな匂いなのか?百貨店の化粧品売り場を通ると鼻先をかすめる甘いフローラル系の匂いだろうか。それとも柑橘系のさわやかなシトラス系の香りだろうか。それとも…と想像するが答えは分からない。分からないから気にかかる。“気にかかる”から、曲を聞く度にどんな匂いなのか?と想像を繰り返す。
雨上がりの匂い、潮の香り、桜の花の匂い。歌詞でよく使われる香りは誰もが嗅いだことのある匂いだ。歌詞を聞いた人はその匂いを思い出し、匂いにつながる記憶や感情が呼び起こされることで、曲の世界観や歌詞に引き込まれていく。特定の匂いが記憶や感情を呼び起こす現象は「プルースト現象」と呼ばれる。プルースト現象は、直接ある匂いを嗅ぐことを前提としているが、ある心理学の実験では、匂いに関する単語を聞いただけでも同様の現象が起こることが分かっている。
匂いの記憶は、視覚や聴覚による記憶より情動的で、鮮明に記憶を思い出させ感情を呼び起こす力が強いと言われる。ドルガバの香水の香りを知っている人は、プルースト現象からその時の体験や記憶に結びつく感情を無意識のうちに思い出し歌詞に共感する。匂いを知らない人はその香りに興味や関心を持ち、どんな匂いなのか気になって自分なりに匂いのイメージを膨らませる。“逆プルースト現象”のごとく、その人なりの香りのイメージと結びつき、聞いた人の感情に働きかける。どちらにしろ、ドルガバの香水という歌詞は曲を印象付ける上で効果的だったのだ。
瑛人効果で今年はドルガバの香水が売れていると聞くが、まだどんな香りなのかは確かめていない。もしも予想と違う香りだったら?と、考えると想像の中の匂いで良いかなと思っている。