社内失業者の存在が、会社を傾かせていることもある。東京某所にある中堅メーカーでは、労働者の味方であるはずの「労働組合」が社内失業者の巣窟と化し、会社の中核を占める中堅や若手社員との対立が激化しているという。同メーカーに勤務する佐々木綾子さん(仮名・40代)の証言。
「正直、10年ほど前までは誰も労働組合なんてやりたがらなかったんですよ。面倒だし、運動はいつも予定調和だし」(佐々木さん)
佐々木さんの会社でも5年ほど前から、現場のIT化が推し進められ、業務の効率化が図られた。そして同時に効率化による大量の「早期退職候補者」も産まれてしまった。話だけ聞けば、退職を間近に控えたリーマンの悲哀にもうつるが……。
「ITスキルをつけるための勉強会とか、若手が管理職社員にパソコンなどの使い方を教える講習会を何度もやってきたんです。社外のスクールに行く場合は、授業料の補助まであった。なのにほとんどのベテランはボーッとしているだけ。早期退職の話が出た時、暇なベテラン達が一斉に労組に入り、社員をクビにするなと運動を始めたんです」(佐々木さん)
彼らが辞めないと、若手の給料は増えない。金にならない彼らが辞めないと新たな人件費を捻出できないため、新たな人材を連れて来られず、会社は痩せ細るばかりで持続性が危うくなる。こう説明するのだが、会社にしがみつき、一枚岩となった「労組」の砦を、誰も崩すことができないという。
人不足だが人が余っている、という、一見すると矛盾したようにも聞こえる現実。時代が大きく変わろうとしている今だから起きていることかもしれないが、この状態を放置しておけば、その先に待っているのは「共倒れ」だけだ。