会社の給料だけでは難しい、少し贅沢な生活をしていた(イメージ)
数ヶ月後には、ホームページへの1日のアクセスが数万件を超えるなどし、国内外の企業から、サプリメントや大人向けグッズに関する広告を載せて欲しいと問い合わせも入るようになった。
「アフィリエイトで数万円、企業からの広告で十数万円。このままだったら会社の給料を超えちゃうな、と思いました」
サラリーとは別の収入源が発生したことで、福田さんの生活は一変。耳目をひきつけるものならなんでも良いと、日夜「コンテンツ探し」に没頭。冷静に考えれば、人様のコンテンツを盗んできて人様に見せて金を得る、という最低な行為であるが、罪の意識はなかった。月に数十万円、1日あたり1万円以上を確実に手にできる「仕事」なのだと、自分に言い聞かせたし、そもそもコンテンツ自体が「不法」なもの。著作権者が訴えてこない、という自信もあった。
「私が盗んでいたのは、日本国内で不正に製作されたR18コンテンツ。モザイクがないとか、隠し撮りとか、そんなものばかり。映像をアップロードしていた動画サイトのアカウントは何度も潰されましたし、警告も幾度となく受けた。でも、著作権者の訴えがない限り、私の身に危険が及ぶことはない」
ホームページを開設した当初、仕組みをよく知らなかったために、国内のネット事業者が提供するホームページサービスを使いサイトの運営を行なっていた。にも関わらず、お咎めなしだったのは当時が今ほど厳しくなく……というより、対応が追いつかず、多くの違法行為が事実上の野放しだったことが窺える。もっとも、運営を始めてすぐに国内サービスを利用することの危険性を察知して、摘発される可能性の少ない海外のサーバーを借り直したり、動画を海外のグレーなサイト上にアップし、そのリンクを貼る方法に切り替えるなど工夫を重ねてサイト運営を継続し続けた。
全部うそ、偽りで得た金
副業開始から3年も経った頃には、広告による収入が会社の給料を大幅に上回った。社宅暮らしは続けていたが、生活も見違えるほど良くなり、古めかしい部屋には似つかわしくない高級家電や家具を買い揃えた。社宅に住む同期が中古の国産車を買うのがやっとのところを、福田さんは高級外車を購入。毎週末のように家族で近場に旅行し、それでいて預貯金は4桁万円を突破。妻や同僚には怪しまれたが「ネットビジネス」という単語を使い、食事でもご馳走しながら説明すると、なんとなく理解した気になってくれたようであった。
時を同じくして、福田さんはついに自身が代表を務める「法人」も設立。海外の広告代理店から振り込まれる収益が主であったためか、多い時でも収入が月に50万円程度であったためかわからないが、税務署から指摘されることも、警察から「仕事」について問われることもなかった。これが結果的に、福田さんの自信、いや過信へと繋がっていく。