1983年の大河ドラマ『徳川家康』では、役所広司の信長に藤真利子の濃姫という顔合わせ。本能寺で明智軍に襲撃された際、濃姫も現場にいた設定で、「光秀めが!!」と白い夜着のまま弓矢をバンバン撃ちまくる信長の横でせっせと矢を渡すのが濃姫だった。女は逃げろと言われても「濃は女子ではござりませぬ」「こしゃくな女め!」と言い合うふたりは似た者同士か。最後、濃姫はみずから大きな薙刀を振り回し、敵将と刺し違えるという大暴れを見せた。
一方、1996年の大河ドラマ『秀吉』の光秀(村上弘明)は、気位の高い母御前(ははごぜ)美(野際陽子)を誰より大事にする男。心優しい妻ひろ子(有森也実)とともに、やっと織田家の要職につけたと思ったものの、信長(渡哲也)の攻撃のせいで人質に出した母御前が磔刑で命を落としてしまった。するとある夜、奇怪な出来事が。
ひろ子が幽霊のような妖気漂う姿で現れ、「信長を殺してしまえー!!」と絶叫。その顔はいつの間にか、目を吊り上げた母御前になってるよ。あわわ…。怖すぎる。大河ドラマではしばしば死者が回想シーンで出てくるが、嫁に乗り移るというのは初めてのパターンだった。ひろ子は山崎の合戦で光秀が討たれた後、密かに届けられた夫の首を抱えて入水するのである。
『麒麟がくる』の二人は、果たしてどんな結末を迎えるのか。「消えた女たち」の哀しみはドラマに余韻を残し、見どころの一つとなるのは間違いない。川口春奈の大暴れはちょっと見たい気もする。