が、本書の勇太は出世が少々遅い。方南町に借りた築50年の2DKには、新婚の勇太夫婦と〈火野素直〉〈ビーバー藤森〉〈赤星マキ〉の計5人が寝起きし、パスタ1kgを丸ごと使った特製〈鬼ボナーラ〉を貧しく分け合い、週末の秋葉原では大阪時代から十八番のヤクザの恰好をしたフラッシュモブが外国人に大ウケするも、ウケ過ぎて金を貰い損ねる始末。

 そんな中、〈筒石監督〉の新作映画オーディションが京都であると聞き、有り金をはたいて参加。冒頭で〈深海りん〉演じるヒロインに絡み、ボコボコにされる不良役に抜擢されるが、ギャラは1人5000円。映画の世界も甘くはない。

「井筒和幸監督の『パッチギ!』(2005年)に出たんです。映画監督になりたいのになり方を知らなかった僕は劇団を作り、食えないから小説を書いたらそれが売れて、監督の道にも繋がった。もし助監督とかで入ったら? 続かなかったと思います。性格的に。小学5年生の時、新聞社のパイロットだったオトンが死んだんです。それからですね。勉強も貯金も『明日死ぬかもしれへんし』っていう刹那的な生き方が根付いてしまったのは」

フィクションに救われてきた

 その彼がなぜ映画なのか。本が売れて生活が一変し、芸能事務所にスカウトまでされる一方、劇団内で孤立し、特に禁酒をやめてからは肝心の小説すら書けなくなった勇太が、長年向き合えずにいた父の死と正対するシーンがある。〈俺はオトンが大好きだった〉〈いなくなったのを認めるのが怖くて、映画という現実逃避に走った〉〈映画を観ている間、俺は人生での一番辛い出来事を忘れることができた〉

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