昨年12月27日に亡くなった羽田雄一郎参院議員(時事通信フォト)
記憶に新しいのが、昨年12月27日の羽田雄一郎参院議員(享年53)の死去だ。数日前から発熱や倦怠感といった症状が続き、PCR検査を受けるため秘書の運転する車で病院に向かう途中で突然、呼吸が荒くなった。「俺、肺炎かな」と口にした直後、意識を失い、すぐに救急搬送されたが、搬送先の病院に到着する前に死亡した。
羽田議員には糖尿病や高血圧といった基礎疾患があったが、まだ50代で精力的に働く現職議員。軽症であったにもかかわらず医師が処置する間もなく重症化、そして死に至ったことは強い衝撃を与えた。
こうした軽症患者が急激に重症化する事例について、呼吸ケアクリニック東京理事長の木田厚瑞医師(呼吸器内科)はこう説明する。
「一連の報道から推測するに、羽田議員は『ハッピー・ハイポキシア』に陥っていた可能性があります」
スマホで会話していたのに
聞き慣れない症状だが、「サイレント・ハイポキシア」とも呼ばれ、和訳すると「幸せな低酸素血症」、「沈黙の低酸素血症」となる。
「身体を流れる血液中の酸素の濃度が低下した状態は低酸素血症、さらに進んだ状態は呼吸不全と呼ばれ、通常は息切れなど強い呼吸困難が発生します。
しかし、新型コロナの感染症で、強い低酸素血症であるにもかかわらず、呼吸困難が起こりにくい人がいる。そのため、本人も周囲も気づかないまま重症化してしまい、最悪、急死するケースが多数報告されています。重症化するまでは苦しくないことから『ハッピー・ハイポキシア』と呼ばれますが、医師としてはとても幸せな症状とはいえません。
振り返れば、昨年3月に亡くなった志村けんさん(享年70)も、かかりつけ医に肺炎と診断されて病院に搬送され、入院翌日には意識を失うほど重症化し、あっという間に亡くなった。
現在は、コロナ感染を防ぐために遺体のCT検査を行なわないため、心筋梗塞や肺塞栓症などの可能性も否定できませんが、すぐに意識を失ったということは入院前から重度の低酸素血症だった可能性はあります」(前出・木田医師)