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弾劾訴追されたトランプ氏「権力者が陥りがちな姿」の典型例

トランプ氏は暴動直前に「議事堂に行け」と群衆をたきつけた(EPA=時事)

権力を手にすると横暴ぶりがエスカレートする(EPA=時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、支持者による議会襲撃事件を扇動したとして弾劾訴追を受けたドナルド・トランプ米大統領について。

 * * *
「史上最悪の大統領」。1月10日、元カリフォルニア州知事で俳優のアーノルド・シュワルツネッガー氏にYouTubeでそう非難されたトランプ氏は、米史上初めて2度にわたり弾劾訴追された。

 6日、ワシントンで行われた集会で、力強く大きな声で「我々は決してギブアップしない。引き下がらない。降伏しない」と叫んだトランプ氏。煽られた熱狂的なトランプ支持者らは連邦議会議事堂へ乱入。制圧にあたった警官を含め死者5人、訴追者70人以上という最悪の事態を招いた。

 反乱を扇動したとして決議されたトランプ氏がスピーチで締めていたネクタイはいつもの鮮やかな赤。目を大きく見開き、手振りは大きく、その手は胸元まで高く上がっていた。演台をがっちりと掴み、身体の向きを右へ左へと変え、集会に集まった人々全てに訴えかけていた。

 襲撃事件後の8日にはビデオメッセージを発表、議会を一時占拠した支持者らを批判し敗北を認めたものの、声のトーンは低く、人々に呼びかけるパワーは6日とは比べものにならないほど弱い。目を細め表情は硬く、口の開き具合も小さく、手を動かす仕草は見えるものの、その手は演台で隠れほとんど見えない。身体の向きを変えることもなく、やや斜めに構えたままである。自分の意にそぐわない発言をしているだろうことが、その言動から感じ取れる。案の定、12日には公の場で、自身の発言は「完全に適切だった」と責任を否定した。

 選挙で不正が行われたと思い込み、自分の再選が国益になると信じているトランプ氏は、6日にも「大統領選挙は我々の圧勝だった」と強調、バイデン氏の勝利を覆すことに再びコミットメントした。自分の意思決定を正当化するため、手段を問わず躍起になり、自らの勝利を信じてさらにエスカレートさせた。「非合理的エスカレーション」である。

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