組織行動学者のジェフリー・フェファーは著書『「権力」を握る人の法則』(日本経済新聞出版)の中で、「権力を手にした人は欲しい物を何としても手に入れようとする強引な行動が現れ、さらには社会規範や規則を自分は破っていいと考えるようになる」という心理学者のケルトナーらの研究を紹介している。さらにフェファーは、大きな権力を持つと「周囲の人間はすべて自分の欲望を実現する手段だとみなしはじめる」と指摘した。現在のトランプ氏はぴたりとこれに当てはまる。
だが煽られたとはいえ、大統領の熱狂的支持者らもまた、大統領選の結果に不満を持っていたため非合理的エスカレーションを起こしやすかったといえる。集団は個人よりコミットメントのエスカレーションを起こしにくいと言われるが、ひとたびエスカレーションを起こすと、それは大きなうねりになりやすい。
トランプ氏は、20日のバイデン次期大統領の就任式を欠席する意向を表明、バイデン氏はそれを歓迎し「彼は国家の恥」と非難した。弾劾訴追後の13日、暴力は許さないと米国民に一致団結を呼びかけたものの、トランプ氏と支持者らの非合理的エスカレーションの波が収まるかは不明で、不安は尽きない。首都ワシントンでは厳戒態勢が敷かれている。