コロナ禍が続くなかでできることについて語る坂東眞理子さん
坂東:自分ができる範囲のことを少しずつやることが大事ですね。仏教でいうところの、様々な善を生み出すもとになる「善根」を少しずつ積み上げていけば、「心住期」において、誰かの心によい残り方ができるのではないでしょうか。直接のお返しを期待すると逆効果になりますが、日頃から「今日はいいことをやったね」と自分の行いを自分で褒めてほしい。何より大切なのは自分を肯定することです。
小笠原:ぼくは自分で考えて行動することが大事だと思います。コロナの感染状況にもよりますが、感染対策をしっかりして、できる範囲で行うと前向きになりやすい。
坂東:コロナで最もまずいのは、気分転換ができないことですね。悩みとか嫌なこと、思い通りにならないことばかり考えても、落ち込むだけです。苦しい悩みに直面したときは、気晴らしをすることがとても大切。カラオケやおしゃべりなど、コロナで制限されることも多いですが、自分が好きで気分が晴れることを見つけて実践してほしい。
小笠原:太陽や星、未来を見るときは視線が上向きます。でもコロナの話題になると、誰もが視線を落としてうつむいてしまう。すると胸を圧迫して気分も落ちるので、憂うつでちょっと元気がなかったり、自分がうつっぽくなりそうだと感じたりしたら、背骨を伸ばして、胸を張って上を向いてほしい。坂本九さんの歌にもありますね。
坂東:「上を向いて歩こう」ですね。
小笠原:そうです。『なんとめでたいご臨終』に書いた「あくび体操」も上を向けますし、最高ですよ。
坂東:コロナで暗くなりがちな世の中だからこそ、上を向いて歩いていきたいですね。
【プロフィール】
坂東眞理子(ばんどう・まりこ)/1946年富山県生まれ。昭和女子大学理事長・総長。1969年に総理府入省。男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、1998年、女性初の総領事になる。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。330万部を超える大ベストセラーになった『女性の品格』ほか著書多数。
小笠原文雄(おがさわら・ぶんゆう)/1948年岐阜県生まれ。小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。循環器専門医・在宅専門医。日本在宅ホスピス協会会長。名古屋大学医学部特任准教授。昨年、第16回ヘルシー・ソサエティ賞医師部門を受賞。在宅看取りを1500人以上、ひとり暮らしの看取りを99人経験。
取材・構成/池田道大 撮影/政川慎治