日本人インフルエンサーが地雷を踏む可能性も

 ネットユーザーの舌戦からYouTuber吊し上げへと発展した中韓キムチ・パオツァイ戦争だが、インフルエンサーの存在によって事がさらにややこしくなっていることを考えると、今後、日本でも同様の事態が起こりうる可能性は充分に考えられる。というのも、Hamzyのような中国で人気の日本人YouTuber、インフルエンサーが増えつつあるからだ。例えば大食いYouTuberとして知られる木下ゆうかは、中国SNSのの「微博(ウェイボー)」で264万人、中国動画共有サイトの「bilibili動画」で53万人のフォロワーを持っている。

「日本人YouTuberにとっても中国市場は魅力です」と解説するのはMakiさん。微博で43万人のフォロワーを持つ、日中バイリンガルのインフルエンサーだ。

「日本の10倍以上の人口がいる中国には、1億人超えのフォロワーを持つインフルエンサーが何人もいます。日本のトップYouTuberといえばHIKAKINさんが有名ですが、中国インフルエンサーのフォロワー数は一桁上。収入もケタ違いで、日本以上に稼げる市場なんです」(MAKIさん)

 以前は、ファンが勝手に中国のサイトにYouTuberの動画を転載して人気となるケースが目立ったが、最近では日本人YouTuberが中国語字幕を付けた動画を公開するなど積極的に中国市場を狙った動きも目立つ。となると、怖いのは落とし穴。歴史問題や尖閣問題など日中間の懸案は多いだけに、地雷を踏んで炎上するケースは今後増えそうだ。

「中国は、インフルエンサーの数が多いので炎上も多いように見えますが、中国人は大ざっぱなところもあるので、実は意外と炎上しにくいんです。むしろ、日本の方が燃えやすいかもしれません。ただ、何が地雷になるかは中国人じゃないとわかりません。ある日本人インフルエンサーが日本のファン向けの動画を中国サイトに掲載したところ、『中国への愛がない』、『ただ稼ぐだけの場所と考えている』と批判されて炎上しました。このあたりの機微は日本人ではなかなか理解できないでしょう」

 謎のバトルが展開されているキムチ・パオツァイ戦争。このままいけば日中間でも同様の争いが起きても不思議ではないというわけだ。

【高口康太】
ジャーナリスト。翻訳家。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を行う。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)など。

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