(写真/高口さん提供)

微博で43万人のフォロワーを持つ日中バイリンガルのインフルエンサー・Makiさん(写真/高口さん提供)

延々と続いてきた不毛な「起源論争」

「どちらが文化宗主国か」を巡る中韓の争いは珍しいものではない。その歴史は2005年の韓国・江陵端午祭(カンヌンタノジェ)のユネスコ無形文化遺産登録にさかのぼる。韓国で1000年にわたり続けられてきた祝祭が無形文化遺産に登録されてもさほど変な話とは思えないが、中国では「中国の節日でもある端午節が韓国の無形文化遺産に登録されるのはおかしい」「端午の節句の起源が奪われた」という謎解釈が広まり、反発が相次いだ。

 その後、「韓国は他人様の文化を盗んで、自国起源だと主張する」という話は、アクセス数が稼げる記事の人気ネタとして定着し、「韓国人は孔子を中国人だと主張している」など、韓国でもごくごく一部の奇人が主張している話を大々的に取りあげ、「だから韓国人は……」と大袈裟に嘆いてみせるという記事が流行した。

 2010年代はキムチ・パオツァイが新たな主戦場となった。2013年に「キムジャン」(晩秋にキムチを仕込む韓国の伝統)がユネスコ無形文化遺産に登録されると、中国側は「パオツァイの文化まで奪われた」と全力で誤解し大騒ぎ。そして、今回のISO認定で「中国の国際的発言権が高まった!」と騒ぐなど、どんどん“トホホ”な状況となっているのだ。

 ちょっと調べれば、文化を盗んだという話とは別物であることはすぐにわかるはずだが、一度「あいつはパクる」という設定が決まると、現実よりも妄想が優先されて進んでいく。これはソーシャルメディアの常といったところなのか。日本でも、「中国人民解放軍が米国の国境に展開」といった道理に合わないフェイクニュースが広がっているので、他人事ではない。

 2000年代はまだネットの中だけの話で済んでいたが、インターネット時代が進み、インフルエンサーの影響力が増すにつれ、事は次第に大きくなっている。今年1月13日、中国共産党中央政法委員会のSNSアカウント「長安剣」は李子柒問題を取り上げ、「パオツァイが中国起源であることには強い証拠があるが、起源は韓国にくれてやれ。我々中国人は過去の栄光を誇るのではなく、無から有を生み出すイノベーション精神を貴ぶべき」という、謎の燃料をくべている。おそらく、SNS担当者の勇み足的な書き込みなのだろうが、中国共産党の中核部局の広報アカウントが書くべき話ではないように思える。

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