しかし、その後、コロナが感染拡大し、もはや木下優樹菜のことなど誰も気にしないし、木下については2019年秋に「姉が勤務するタピオカ屋を恫喝した」ことも覚えていない。完全にコロナの方が自分自身の人生に影響があるため、「闇営業」も「タピオカ」も「木下と乾の関係」もどうでもよくなっている。
ちなみに「闇営業」をした芸人についても、当時のネットでは、「誰を猛烈に叩くべきか?」という空気が少しずつ完成されていった。その結果、最も叩いて良いということになったのは雨上がり決死隊・宮迫博之である。最年長者であることに加え、過去に不倫がバレたことが原因だ。名も知らぬような若手芸人はむしろ吉本興業の待遇の悪さから闇営業に手を出さざるを得なかった、という同情的文脈で捉えられた。
ザブングルは闇営業芸人の中では宮迫、田村亮、スリムクラブに次ぐ知名度だったと思われる。だから苛烈に叩かれたが、コロナに熱心な今、引退宣言したら完全に許されたようだ。日本人、忘れっぽいな(笑)。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。近刊に『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。
※週刊ポスト2021年2月19日号