【竹久夢二】
大正浪漫を代表する画家・詩人として活躍した竹久夢二(享年49)。彼が生涯で最も愛した女性が、笠井彦乃だった。宮内庁御用達の紙問屋の娘として育った彦乃は夢二の大ファンで、夢二が妻子のために営んでいた『港屋絵草紙店』で出会い、恋に落ちた。妻と離別した夢二は彦乃とともに京都で同棲生活を始める。しかし、九州旅行中に彦乃が結核を発病し、以前からふたりの仲に猛反対していた彦乃の父によって引き裂かれてしまう。入院先を見舞うことも許されず、結局、彦乃は夢二と夫婦として結ばれぬまま、23才という若さでこの世を去った。
「当時、結核は不治の病でしたが、離ればなれにされたことで体調がますます悪化してしまったのでは。もし、ふたりが会えていたら彦乃の免疫力もアップして、命を落とすまでに至らなかったかもしれません。『愛の不時着』も撃たれたり、傷を負ってもまた会えて復活しているので、病気になったりしているときこそ会わせてあげていればと思います。彦乃は夢二のすすめで美大にも入って絵を描いていましたし、生きていればまだまだ創作を続けられたのかと思うと惜しまれます」(辛酸さん)
【プロフィール】
川奈まり子(かわな・まりこ)/作家。東京生まれ。女子美術大学短期大学部グラフィックデザイン教室卒業。『東京をんな語り』(KADOKAWA・2月25日発売)では、「坂田山心中」についても言及している。
辛酸なめ子(しんさん・なめこ)/漫画家、コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。『女子校礼讃』(中公新書ラクレ)が好評発売中。
取材・文/加藤みのり
※女性セブン2021年2月18・25日号