二階氏が前述のような発言をした時、その周りには自民党の幹事長代行らが並んでいた。だが誰もその発言を止めようとはしない。彼らの中にも現状維持バイアスがあるからだ。過去はこれで上手くいっていたという経験や、成果や実績があれば尚のこと、変化するよりも現状を維持する方が安定的だと感じられるし、変化に伴うマイナス面やデメリットばかりが目につき、安定安心を失うのが怖くなる。バイアスが強ければ強いほど、現状にしがみつこうとする。
自らの発言の真意を問われた二階氏は2月9日、今度は「深い意味はない」と返答。ジェンダー問題について聞かれると、「我々は男女平等で、ずっと子どもの頃から一貫して教育を受けてきた。女性だから、男性だからってありません」と持論を展開した。これまで同様、その考えや意識が変わることはないことがわかる。そして「女性が心から尊敬しています」と述べたのだ。
この発言は“てにをは”が違っている。てにをはとは言葉をつなぐ助詞のこと。これが変わると文章のニュアンスが大きく変わる。「女性が」、と言えば「女性」の部分が強調され、女性が誰かを尊敬していることになる。自分が尊敬しているなら、ここでの正解は「女性を」だ。こんな細かな言い回し1つからも、二階氏の現状維持バイアスが見え隠れする。
抗議の声は止まらず、スポンサー企業からは苦言が続出している。今回の問題は、“重鎮”“長老”と呼ばれる人たち、彼らを取り巻く人々の現状維持バイアスがありありと感じられる絶好の機会だったと思う。誰が長老の首に鈴をつけるのだろうか。