すでにその候補になりそうな人物もいる。トランプ政権で国連大使を務めるなど、トランプを長く支えてきたニッキー・ヘイリー元サウスカロライナ州知事はインタビューで、「トランプ氏が次の大統領選挙に出馬できるとは思わない。彼はあまりにも落ちてしまった」と語り、「私たちは彼についていくべきではなかったし、彼の話を聞くべきでもなかった」と反省の弁を述べている。そして、2024年の大統領選挙への出馬を検討していることも認めたのである。
ヘイリー氏は49歳。インド系アメリカ人で、下院議員時代から共和党のホープだった。サウスカロライナでは初の女性知事であり、初のマイノリティ出身知事であり、当時は全米最年少知事でもあった。中絶に反対するなど伝統的な保守派だが、過激な保守派の旗印になっていた南部連合旗を州議会から撤去するなど、改革派の一面もある。マイノリティであることは、保守派の共和党で支持を受けるために日本人が想像する以上に大きなハードルになるが、彼女の場合はミット・ロムニー上院議員など、共和党穏健派からの信頼も厚い。
頭がコチコチの長老たちが何と言おうと、共和党はトランプ氏と訣別して新しい道を歩まなければ再建できないだろう。日本では「老害が粗大ごみになったなら掃いてもらえばいい」と豪語していた森喜朗・元首相が五輪組織委会長の座を追われたが、共和党にも新しい世代のリーダーが必要になっている。ヘイリー氏と、同じくマイノリティ出身女性であるカマラ・ハリス副大統領が次の大統領選挙を戦うことになれば、その時、アメリカは新しい時代の幕開けを迎えるだろう。
■佐藤則男(ニューヨーク在住ジャーナリスト)