不世出の大横綱・双葉山が興した「時津風部屋」を巡る醜聞がどのような決着となるのか、宙ぶらりんの状態が続いている。本場所開催中の不要不急の外出が禁止されるなか、初場所中に雀荘や風俗店に出入りしていた時津風親方(元前頭・時津海)の処分を巡る問題である。文春オンラインが1月27日付で初報を出し、同日に時津風親方は退職届を出したと報じられたが、3週間近くが経っても、処分の内容などは決まっていない。
「時津風親方は、感染対策で外出が禁止されていた昨年9月の秋場所直前にも宮城県まで出向いてゴルフコンペや居酒屋での会食などに参加していたことが発覚し、同10月の理事会で『委員』から『年寄』への2階級降格処分を受けていた。今回は『解雇』を含めた厳罰に処される可能性が高いとみられていたが、どうも相撲協会側の動きは腰が重いように見える」(担当記者)
2月に入ってから協会のコンプライアンス委員会が聞き取り調査などを進めているが、芝田山広報部長(元横綱・大乃国)は22日の臨時理事会で処分についての話し合いが行なわれることを示唆するにとどめている。
「時津風親方の処分を巡っては、協会内でも意見が割れているようだ。緊急事態宣言下に銀座のクラブで豪遊した自民党の国会議員でさえ、議員辞職ではなく離党するだけといった例もある。『解雇』の処分は重すぎで、部屋持ち親方から部屋付き親方へ降格させる『師匠交代の勧告』に留めるべきだという声もある。
時津風親方自身は親しい知人に“部屋付きになってまで協会にしがみつくつもりはない”と退職の意思を持っているというが、協会内には“明日は我が身”だと、厳しい処分で前例をつくることを嫌がる空気もあるという。実際、昨年の7月場所中に連日のキャバクラ通いが発覚した人気力士・阿炎の時も、本人は『引退届』を提出したが、理事会が受理せず『出場停止3場所』の処分となっている」(協会関係者)
時津風部屋は“双葉山道場”の流れを組む名門であり、「時津風」は一門の統帥となる年寄株だ。今回の騒動の背景には、名門部屋ゆえの問題も見え隠れすると話すのは、若手親方のひとりだ。
「第14代の時津風親方(元大関・豊山)は協会の理事長まで務めた人物です。双葉山の教えを大事にして立ち合いの正常化など、土俵の充実につとめた。ただ、名門部屋の後継者になると“自分は特別”という意識も芽生える。元大関・豊山の跡を継いだ元小結・双ツ竜(第15代時津風)は、2007年に弟子への暴行死事件で解雇され、現役だった時津海が急遽引退して第16代の時津風を襲名した。当時は、元大関・豊山が東京農大出身だったので、同じ大学の後輩だからと時津海に白羽の矢が立った。要は指導者としての資質よりも学閥が重視され、部屋付き親方の兄弟子たちを飛び越えて師匠となってしまった。それゆえ、少しずつ“自分は特別だ”というエリート意識を持ってしまったのではないか。だからこそ、部屋付き親方として協会に残ることは耐えがたいのでしょう」
そうしたなかで、処分の中身と「時津風」の株がどうなるかが、関係者の間では注目を集めている。