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「アップルカー」生産委託報道でざわつく自動車業界 日系メーカーの危機感と対抗策

投資家は自動車メーカーの生産受託を好感

 では、アップルがどこかの自動車メーカーを買収して自社で自動車ビジネスをやるという可能性はあるのか。それは現実的なプランとしては成立するものの、アップル側が二の足を踏むだろう。

 アップルは付加価値の低い分野への投資を徹底的に嫌う企業でもある。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の精神を突然発揮して投資を行う可能性がないとは言えないが、あったとしても先述したようにレベル5が見えてからのタイミングになるだろう。

 それでも自動車業界はアップルの動向から目が離せなくなった。最初にアップルから打診を受けたと報じられた現代自動車の株価は1.5倍に急騰、提携進展を否定するコメントが出るや今度は暴落と、神経質な動きを見せた。

 独自で生き残りたい、利益を拡大したいという自動車メーカーの思いとは裏腹に、投資家はアップルカーを作ったほうがその企業にとってプラスとみているのだ。これもまた、アップルのブランドフォースの恐ろしい部分と言える。

アップルにクルマそのものの価値を認めさせる

 自動車メーカーにとって、アップルの攻勢は悩ましいところだ。ただでさえ、自動車メーカーはプラットフォーマーに組み敷かれることに恐怖を感じており、対応に躍起だ。

 たとえばトヨタ自動車はモビリティのプラットフォーマーになると宣言し、静岡に「ウーブンシティ」という実験都市を作るなどして、モビリティの領域は巨大プラットフォーマーに渡さないという構えを見せている。

 だが、これは無駄な抵抗に終わる可能性も否定できない。いくらモビリティ分野の技術を固めても、それは人間の社会活動の一部でしかない。生産者、消費者、産業分野、地域を問わず24時間365日、生活に密着し続けることで進化するスマホのメガプラットフォームの下位に置かれるだけだ。

 自動車メーカーが産業の食物連鎖の最上位でいようと頑張りすぎるのは、おそらく良い結果にはつながらない。今後予想されるアップルの攻勢を自動車メーカーが受け止めるには、どんな道があるのだろうか。

 ひとつはクルマそのものの価値を、ソニーのスマホ向けカメラモジュールのように替えがきかないくらいのレベルに引き上げ、アップルにその価値を認めさせることだ。

 いくら制御アルゴリズムが発達しても、ハードウェアがその要求を高機能かつ低コストで実現してくれなければ、ソフトウェアは自分で動くことはできない。クルマ自体を高品位化するというのは自動車工学がコモディティ化した今日では茨の道だが、低コスト・高品質のノウハウの見せどころというものだろう。

オンライン決算会見で「異業種との連携はあり得る」と話した日産の内田誠社長(時事通信フォト)

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