「ブランド力では戦う前から勝負がついている」

 だが、今のところ冒頭の現代自動車をはじめ、アップルが打診したと名が挙がったメーカーで提携に前向きという話は出てきていない。

「当然でしょう。アップルなんかに協力したら、遠くない未来にブランドそのものが呑み込まれてしまう可能性は高い。そのくらいアップルのパワーはすごい。考えてみてくださいよ。先進性、機能、信頼性が一定水準をクリアしていさえすれば、アップルのりんごマークのクルマを喜ぶユーザーは世界で数多く出てくるでしょう。

 それに対してアイフォンにりんごマークでなく自動車メーカーのマークがついていたとしたらどうですか? フェラーリみたいなプレステージブランドは別でしょうが、大衆ブランドや中途半端なプレミアムブランドだったらユーザーは見向きもしない。ブランドフォースという観点では、戦う前から勝負がついている。

 

EV市場で世界をけん引する米テスラの量産型EV「モデル3」(dpa/時事通信フォト)

EV市場で世界をけん引する米テスラの量産型EV「モデル3」(dpa/時事通信フォト)

 商品企画だって、テスラ車の未来感を見ればわかるように、シリコンバレー企業はデジタルネイティブならではの未来的な発想を盛り込むという点では古い概念に縛られている我々とは比べ物にならないくらい優れている。技術的には優れているが経営が思わしくないというメーカーがアップルの軍門に下ったら、自動車業界の勢力図はどうなるんでしょうね」(前出のメーカー関係者)

アップルの厳しい原価要求はどこも呑めない

 まさに黒船出現の感があるアップルのアップルカー生産委託打診。ただ、アップルにも大きなアキレス腱がある。それは彼らのビジネスモデルそのものだ。

 アップルはファブレス(無工場)企業で、中核技術の開発は自社で行うが、製品については企画からデザインを含めた仕様策定という上流と販売・保守という最下流を手がけ、真ん中の部品を含めた製品作りは全部アウトソーシングしている。

 クルマに限らずモノづくりはその上流と下流の付加価値が高く、中間部である生産の付加価値は低い。ゆえに、スマホでも利益はアップルに鬼のように集中し、生産側は性能的に替えが簡単にきかないソニーのカメラモジュールのような一部分を除き、低い利益率でアップルの高い要求に日々応え続けている。

 自動車メーカーへの委託生産打診でも、アップルはスマホに似た原価要求を行っている可能性が高い。

 そもそもBEVを作りさえすればいいのなら、開発能力も生産能力もある生産受託企業、たとえばオーストリアのマグナ・シュタイヤーのようなところに頼めば一発でケリがつくはずだ。そういうところにアップルが話を持って行かないのは、コスト問題で最初から交渉にならないことをアップル側が重々承知しているものと推察される。

 自動車メーカーもそれは同じで、アップルの原価要求を呑む自動車メーカーは国を問わず、そう簡単に出現しないだろう。

 たとえ、最初に少々うまい話を持ちかけられたとしても、BEVから自動運転、シェアリングサービスと、クルマの次世代ビジネス要素が統合されていくにつれて要求が厳しくなり、最終的に生かさず殺さずという状況になるのが明らかであれば、その話には乗れない。

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン