ビジネス

「アップルカー」生産委託報道でざわつく自動車業界 日系メーカーの危機感と対抗策

いよいよEVの生産体制に入るのか(米アップルのクックCEO/AFP=時事通信フォト)

いよいよEVの生産体制に入るのか(米アップルのクックCEO/AFP=時事通信フォト)

 米アップルがかねてより噂されてきたEV(電気自動車)開発を進め、いよいよ量産車の生産委託を自動車メーカー各社に打診しているとの報道が飛び交っている。その中には日系メーカーの名も取り沙汰されているが、果たして“アップルカー”の参入は、既存の自動車メーカーにとって、どれほどの脅威となるのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

 * * *
 巨大プラットフォーマー、アップルが韓国の大手自動車メーカー、現代自動車に「アップルカー」の製造を打診──2021年の年明け早々、このビッグニュースが自動車業界を駆け巡った。

「交渉が上手くいく、いかないではない。アップルが自動車メーカーにアップルブランドのクルマの製造を実際に打診したということ自体が衝撃でした」

 報道に接した日系自動車メーカーの技術系幹部の一人は印象をこう語っていた。

まずはBEVで市場に橋頭保を築く

 アップルやグーグルといった、いわゆるプラットフォーマー企業は、世界にあまねく普及しているスマートフォンから取得される膨大なデータや、通信プラットフォームを通じたサービスの提供で膨大な利益額と驚異的な利益率を記録し続けている。

 一方で自動車は産業規模こそ大きいが、薄利多売という真逆の世界だ。そんなビジネススタンスの違いゆえに、プラットフォーマーは簡単に自動車本体には手を出さないのではないかという見方が自動車業界では一般的だった。

 プラットフォーマーがそこに乗り出してくるとすれば、無人での配車や回送を可能とするレベル5(無条件の完全自動運転)など、自動車ビジネスに本格的なゲームチェンジをもたらす技術の完成のメドがついたときで、それまでにはかなりの時間がかかる。それまでに自動車業界側が何らかの防衛策を打てば、彼らの支配に対して何とか抗うことも可能になるという読みだ。

「今回のアップルカーの話題は、それとはまったくステージが異なります。いくら先進的なものでもレベル3(運転者が責任を持つ自動運転)、良くて4(条件付き自動運転)という段階で彼らがクルマ本体に乗り出してきたのは完全にブランド戦略でしょう。

 アップルという凄まじいブランドパワーでの斬り込みを狙ったもので、プラットフォームによる支配の前に、BEV(バッテリー式電気自動車)で市場に橋頭保を築いておこうということでしょう」(前出のメーカー幹部)

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン