スポーツ

池江璃花子「奇跡の五輪出場」 難関は21年前の千葉すずルール

池江璃花子は厳しい代表選考に挑む(時事通信フォト)

池江璃花子は厳しい代表選考に挑む(時事通信フォト)

 2019年2月に白血病を発症した競泳女子・池江璃花子(20)が、驚異的な復活をみせている。東京都オープン(2月20~21日)の50mバタフライで優勝するなど、“東京五輪に間に合うのでは”と思わせる活躍ぶりだ。

 競泳の五輪代表は4月3日からの日本選手権で決まる。池江は同大会で自由形(50m、100m)とバタフライ(100m)の個人3種目で五輪が狙える状況になってきた。

 各種目の代表枠は2つ。ただし、日本選手権では2位以内に入るだけでなく、日本水泳連盟が定めた「派遣標準記録」を突破しなくてはならない。

「復帰後の池江のタイムは、50m自由形では派遣標準記録に0.5秒以内まで迫るものの、100m自由形、100mバタフライではいずれも2秒以上届かない。白血病発症前の自己ベストではクリアしていたので、持久力がどこまで戻るかがカギだが、個人種目での出場はタイムが高い壁となるかもしれない」(水連関係者)

 この「順位+記録」の厳しい基準には、元金メダリスト・北島康介も涙をのんだ。2016年リオ五輪選考レースの100m平泳ぎで、北島は2位に入ったものの派遣標準記録に届かず、引退を決めた。

「当時、日本水連に抗議の電話もきたが、特例は認められなかった。ただ、キャリア終盤だった北島に対し、池江は泳ぐたびにタイムがよくなっていて、7月の本番までに記録が伸びる可能性は十分にある。日本選手権で『2位以内だけど記録が届かない』ということになれば、世間から北島のとき以上の反応があるのでは」(担当記者)

 日本水連はあくまで、「公表している選考基準がすべてです」とするのみ。

 こうした基準があるのは2000年シドニー五輪の代表選考時の「千葉すず問題」がきっかけだ。

「2大会連続で五輪に出場していた千葉は、国際水連の標準記録をクリアして選考会で優勝したにもかかわらず、日本水連が“世界で戦えるか”を検討した結果、代表から漏れた。不服とする千葉が、スポーツ仲裁裁判所に提訴する騒ぎとなったのです。これを機に基準が明確になった経緯がある」(前出・担当記者)

 透明性の高い選考になるきっかけを作った千葉の行動を高く評価する関係者は多い。その厳しい基準をクリアし、池江は笑顔で五輪切符を手にできるか。

※週刊ポスト2021年3月12日号

2000年の千葉すずによる会見(写真/共同通信社)

2000年の千葉すずによる会見(写真/共同通信社)

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン