2020年の594回騎乗中、逃げ先行212回。逃げ率.357(!!)。そのときの1着85回で勝率.401。連対率.608、3着内率.703。トータルがそれぞれ.281、.468、.572だから、すごい数字が逃げるとさらに跳ね上がる。特にハナを切った38回中19勝と半分勝ち。ダッシュよく前へ、流れを決めたと見るやすっと落ち着かせて脚をためる。直線は剛腕炸裂。この塩梅が絶妙なのだった。
「逃げたときには」とは結果論の典型だろう。だが先行しそうな馬は検討時に分かる。その脚色を鞍上も承知しているから、「逃げて勝てると思うから逃げる」という証左ではなかろうか。「とにかく前につけて粘る」といった直情径行の出たとこ勝負よりも深みがありそう。でもそのぶん、馬券的妙味は薄くなるかな。リーディング上位常連の、このあたりのメンタルに寄り添えれば欣快だ。
【プロフィール】
須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2021年3月12日号