衆院総務委員会で答弁する総務省の谷脇康彦総務審議官(時事通信フォト)
その1は、それまで「記憶にない」とトボケていたけど、証拠が出てきて認めざるを得なくなった場面での発言。微妙に人ごとっぽい言い方をすることで、ウソをついていたこととの整合性を必死で取ろうとしています。
その2は、この件が報道され始めた頃の菅首相のスタンス。たしかに通常は、息子がしでかしたことで親が責められる筋合いはありません。しかし、息子がかつて総務省にいたり東北新社で働いたりしていることは、明らかに菅首相と深い関わりがあります。
観念したのか、菅首相は途中からその3のスタンスに変更しました。「結果として」や「このことについては」という余分なひと言(省略しても意味は同じです)を入れずにいられないところに、本当は謝りたくなんてないという心情がにじみ出ています。
その4は、なぜおごられたのかを聞かれたときの回答。仮に「その分、相手にメリットがあるんだから、おごってもらって当然でしょ」と思っていたとしても、「心の緩み」のせいにしてしまえば、どす黒い構図やセコイ気持ちを隠すことができます。
その後、進退について聞かれたものの、その5のフレーズで辞める気はないことを表現しました。抽象的な言葉が並ぶばかりで、具体的に何をどうするかはわかりません。ということは、とくに何もしなくてもウソにはならないことになります。
さあ、いざ自分がピンチに追い込まれた場面では、こうしたフレーズを積極的に繰り出しましょう。社長に「お前、本当にリベートなんて受け取ったのか。なんでそんなことしたんだ!」と責められたら、「今となっては あったのだろうと受け止めております」や「それは本当に心の緩みでございまして」と返せばたぶん大丈夫。
配偶者に不貞行為がバレたときは、「結果としてそういう行為をすることになりました。このことについてはたいへん申し訳なく思います」と謝りましょう。勇気があれば「下半身は完全に別人格ですからね」と開き直る手もあります。
……すみません。明らかに火に油を注ぐだけですね。エリートのみなさんが実践している方法なのに、何がいけないのか。日常生活では通用しそうにないのに、なぜ国会や政治の場ではそれなりに通用してしまうのでしょう。学んだり考えたりしなければいけないのは、じつはそっちの問題のほうかもしれません。
今となっては、結果として、実用性に欠ける記事になってしまいました。このことについては、本当に心の緩みでございまして、たいへん申し訳ありません。かくなる上は、自分の身を省みて、できる限り自らを改善していけたらと思っております。何を省みてどこを改善すればいいかはよくわかりませんけど、そういうことでお許しください。