未治療で自覚症状のない高血圧患者は国内に1400万人も(写真/GettyImages)
肥満の人のほか、あごが小さかったり、首回りに皮下脂肪がついている人は気道の断面積が小さくなりがちで、睡眠時無呼吸症候群になりやすいといわれる。
また、いびきをかく、昼間に眠気が強く残る、疲れが取れないなどの症状に覚えがある人は、夜間高血圧である可能性を疑った方がいい。自分が夜間高血圧か確認するなら、こんな測定方法がおすすめだ。
「朝、起きて30分以内の血圧を測ります。上が135mmHg、下が85mmHgを超えるようなら循環器内科などを受診してほしい。『24時間血圧計』という医療機器もあり、医師が必要だと判断すれば保険適用で安価で借りることができます」(近藤さん)
未治療で自覚症状のない高血圧患者は国内に1400万人もいるとされる。この中には健診や検査で気づかない夜間高血圧の人も多く含まれると推定される。
逆に、「普通の高血圧」だと思って薬をのんでいたところ、実は夜間高血圧であったことが後々わかったというケースもある。
「降圧剤をのんでも効果がないというので話を聞くと、睡眠時無呼吸症候群の症状があり、夜間高血圧だとわかることもあります。自覚症状のある人はもちろん、家族に血管系の病気がある人は積極的に調べてほしい」
夜間高血圧と日中の高血圧では、薬をのむ時間帯がまったく変わってくる。ただ薬をのんでいればおさまるものではない。秋津医院院長の秋津壽男さんがいう。
「通常なら日中に血圧が高くなって夜には下がるため、降圧剤は朝いちばんにのむのが基本。昼間に仕事や運動をしたときに血圧が上がりすぎるのを防ぐのが狙いだからです。もし夜間高血圧だとわかれば、主治医と相談した上で、薬を2つに割って朝晩に分けてのむなど、時間差でのむ必要が出てくる。通常なら日中にガツンと効くようにしているものを、一日中薬効が続くように調整しなければならないのです」(秋津さん)
ただし、降圧剤ののみすぎが「夜間低血圧」のリスク要因となることもある。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが言う。
「夜に血圧を下げる薬をのむと、寝ている間に血圧が下がりすぎてしまう人もいる。血圧は低ければいいというものではなく、ふらつきによる転倒、むくみ、頭痛、疲労感などさまざまな体調不良のほか、脳梗塞を引き起こす恐れもあります」
脳梗塞も、寝ている間に亡くなっている場合の主な原因となる1つ。脳の血管に血栓が詰まって血流が止まり、その先の脳細胞が壊死してしまう病気だ。詰まる場所によって起きる症状はさまざまだが、太い血管が詰まって、朝まで気づかないと死に至ることもある。
高齢者と若い世代では、血圧管理の考え方も変えなければならない。
「たとえば80代前後の高齢者になると、家庭血圧が135mmHgを超えていても、服薬によるリスクを考えて杓子定規に投薬はしないケースもあります。ただ、若い人の場合はその後の人生がまだ30〜40年もある。高血圧は放置すればするほど血管をボロボロにしてしまうリスクがあるので、積極的に治療すべきだと思います」(近藤さん)
直接見ることはできないが、血管という全身に張り巡らされた“命綱”の状態に意識を向けておきたい。
※女性セブン2021年3月11日号