今回の地震で福島県二本松市のサーキット場では土砂崩れが発生(時事通信フォト)
今回の地震では、午前5時からのニュースに登場したNHKの糸井羊司アナが「ほとんど眠れなかった方、早く目覚めてしまった方、ともにお疲れのことと思います」「できるだけ安全な場所で少し目を閉じながらでもかまいませんので、最新の情報をお聞きいただければと思います」と優しく視聴者に語りかけたことが話題になった。NHK記者が言う。
「アナウンサーは『命を守る呼びかけ』に取り組んでいますが、2016年の熊本地震や西日本豪雨なども経て、時には自分の言葉で語りかけたり励ますことも必要だとしています。これまで目立たなかったNHKアナが災害時に実力を発揮してSNSなどで注目を集めることが増えています」
テレビの緊急地震速報では赤や黄色の切迫感のあるテロップが使われるようになり、画面の左側や下部に情報が流れる“L字放送”が定番になった。
「特にNHKはL字放送を年々強化させていて、地震の速報だけでなく、避難所情報からガスが止まった場合の連絡先や、断水した場合の給水所の場所など多岐にわたって生活情報を流すようにしています。高齢者やスマホを使いこなせない人にとっての一番の情報源はテレビという意識です。
NHKは地震などで交通機関が麻痺することも想定して、年に一度、徒歩か自転車で自宅から出局するまでの経路や所要時間を確認して報告するという訓練もしています」(同前)
日テレで長くディレクターを務めた上智大学文学部新聞学科の水島宏明教授が言う。
「3.11の津波速報はあまり緊迫感がなく、危機感が伝わりにくかったという反省があって、以降はNHKが率先して危機感が伝わるような報じ方を心がけ、民放も追随しています。
今回の地震では津波がなかったために落ち着いた報道でしたが、津波警報が出た場合は、リアルタイムで津波が来る時間や波の高さ、また、それが終わってからもしばらくの間沿岸部を中継で流すといった決まり事があります」
災害予測技術の進化を知ることは、その情報の重要性を理解し、命を守る正しい行動へとつながるはずだ。
※週刊ポスト2021年3月12日号