芸能

井筒和幸監督「劇中でもコロナを描くべき」論のくだらなさ

コロナ禍の新たな表現様式を井筒監督はどう考える?

コロナ禍の新たな表現様式を井筒監督はどう考える?

 人気漫画『相談役 島耕作』で主人公・島耕作が新型コロナウイルスに感染し、話題になっている。はたして創作に携わる者は、フィクションにどこまで現実を反映させるべきなのか。コロナ禍の新たな表現様式について、『パッチギ』などの作品を撮った映画監督の井筒和幸氏が持論を述べる。

 * * *
 僕の映画は喧嘩や乱闘はもちろん、一貫して濃密な人間模様を描いてきた。そこに人の熱量があるからだ。

 そんなこともあって、コロナを前提とする世界観の映画なんて撮る気にもならない。群衆が入り乱れるシーンでみんなマスクして、距離をとってるなんて、そんなバカげた光景を誰が見たいのか。

「劇中でもコロナを描くべき」なんて言っている作り手は、いっそ遠隔撮影で分けて撮ったらいい。それで一人ずつCG加工でもしたらいい。きっとろくでもない珍品ができあがるよ。そんな世界でどんな人間ドラマが生まれるのか、僕にはまったく理解できない。

 現実問題として、撮影現場では密なシーンを撮るのが難しくなってることは確か。苦労して森の中に行ったり、海の上で撮るとかね。それでもスタッフが固まるとアウトだっていうから話にならないよ。一人で歩いている姿を監視カメラで撮ってろっていうのか。

 こんな環境で、世界のまともな監督らはどうしてるか。モノ作り自体をやめているんだ。ワクチン打つまでじっとするしかない。「本物の作品」を撮れないんだし。

 表現ってのは、すべてのルールから解き放たれて自由であることなんで。現実世界がどうだからとか、そんなことは一切関係ない。3密であろうが、主人公が敵を何人殺そうが自由でしょ。マスクを着けた登場人物なんて、それこそ自由を奪われている象徴みたいなもの。アホらしいね。そんな窮屈な表現で本当の人間は描けない。

 いまは次回作を準備し始めた段階だけど、これからも僕が撮るのは“ド密”な作品になりますよ。

※週刊ポスト2021年3月19・26日号

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン