Aさんの左手に彫られたタトゥー。母親の野崎さんは悲しみに暮れている
「今年4月、児童養護施設から帰ってきた娘のAを見て愕然としました」──一人娘のAさんを育ててきたシングルマザーの野崎麻美さん(仮名・29歳)は、施設で愛娘が受けた“消えない傷”にやり場のない怒りを今も抱えている。野崎さんが語る。
「左手の親指と人差し指の間に黒いハートマークが入っていて、『これは何?』と聞くと、施設で知り合った『中2のBちゃんにつけられた』というんです。身体を確認したら手や足に5つの刺青がありました。
『そのうち消えるから』と本人は言われたみたいですが、カラコンのケースに墨汁を入れて、その墨を使ってまち針で刺しながら色を入れている。だから刺青なんです。娘はまだ10歳で一生消えない傷跡を残されたんです」
事の発端は昨年7月まで遡る。当時、福岡県在住の野崎さんは、Aさんが在学する小学校から「学校に来てほしい」と携帯電話に連絡が入った。小学校に赴くと児童相談所(以下、児相)の職員がいたという。
学校から通報を受けた児相が児童虐待防止法により、一時保護の判断が下され、Aさんは児童養護施設に入所が決まる。野崎さんは施設側とAさんが帰宅できるよう掛け合ったが、施設側は「面会を重ねてから」と判断し続けたという。結果として、Aさんが児童養護施設を退所して、野崎さんと一緒に暮らすことになったのは約9ヶ月後の今年4月のことだった。