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東日本大震災を経験後、天国に召されたゴールデン・レトリーバー。晩年は穏やかに過ごしたという

ペットと避難所で過ごすのは困難だった

「揺れがおさまると、ヘリコプターから津波警報が流れてきました。慌てて学校から戻ってきた妹と合流し、犬も校庭などで受け入れてもらえるという“同行避難場所”を探し、車で向かいました」

 ところが、被災から1~2時間しか経っていないにもかかわらず、避難所は人があふれていたため、自宅に引き返すことにした。

「別の避難所に行こうとも思いましたが、そもそもこの当時、犬と避難できたとしても、人だけ施設内、犬はケージに入れられ、雨ざらしの屋外に放置される状態でした。不安とストレスで鳴き声もひどく、ほかの避難者の迷惑になるだけでなく、犬たちにとっても劣悪な環境でした。だったら自宅で過ごした方がいいと思いましたね」

 最近でこそ、避難所の中でペットと一緒に過ごせる“同伴避難”施設が増えつつあるが、このときはまだなかった。

「もしこのとき、同伴避難ができる避難所があって受け入れてもらえるとしても、行かなかったと思います。室内だったら余計に、犬が吠えれば周りの人に迷惑ですし、粗相をしたらにおいも気になる。それに力の強い大型犬は、コントロール不能になるので、どんなトラブルが起こるかわかりません」

 幸い、電気、ガスが止まっていたが、水は少し使えたので、自宅で避難生活をしようと腹をくくった野地さん一家。犬用のトイレ袋やペットシーツが大量にストックされていたのも大いに役立ったという。

「あの震災から10年経って、ペットとの避難も改善されてきましたが、それでも私は、ペットのいる家庭では基本“自助力”を蓄えておいた方がいいと思います。避難所に行かなければ物資の支給面でも情報面でも不利になります。あらかじめ自分ですべてなんとかするという心構えを持ち、万全の準備をしておくことが大切だと思います」

 いまは、3匹の小型犬と暮らしている野地さん。震災の経験を生かし、しつけや防災対策に努めているという。

取材・文/鳥居優美

※女性セブン2021年3月25日号

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