工房の壁には花田優一氏の信条が綴られている
「世間っていうものの無責任さを、今でもすごく感じています。一人の人間に対しては真正面に向き合いますけど、世間っていう風のような生き物に対しては、斜に構えているところがあるかもしれません」
生意気に見られてしまうのは、幼少期から続く異常ともいえる環境が影響しているのは、間違いなさそうだ。だが、ネット上の批判など、優一氏にとっては大きな問題ではないのかもしれない。
「顔も名前も見せず、面と向かって言う覚悟もない人たちの意見に、左右されるつもりはないですね。今の僕の靴の仕事やアーティストの活動を理解してもらうのは大変なことだし、批判もあって当たり前ぐらいに思っています。でも、批判に耐えて突き進んでいけば、いつか見たことがないほど大きなものが生まれ、全てをひっくり返せるという信念があるんです」
ところで、優一氏は『週刊女性』で“貴乃花と路上で1時間半に渡ってつかみ合った”と主張。元横綱を相手にそんなことが可能なのかと、疑問の声もあがっている。
「僕は自分と家族が見た景色をそのままお伝えしています。ああだこうだ言ったら水掛け論になってしまうので、これ以上何も言うつもりはありません。記事でお伝えしたことがすべてです」
もはや修復不能にも思える花田家だが、優一氏にはささやかな願いがある。
「一晩でもいいから、家族5人で一つのテーブルを囲んで、普通にメシを食えたらなと思っています。幼い頃に当たり前だった空間を、一度でいいから取り戻したい。それは、長男としての責任でもあると思っています。僕は生まれてから今日もずっと、父のことが好きで好きでたまらなくて、あの人のようになりたくて生きてきました。
それが、僕の人生の、基盤です」
息子の願いが叶う日は、来るのだろうか。
■取材・文/西谷格