芸能

ジェームス三木氏「ドラマは表情が命。マスクはそれを奪ってしまう」

脚本家で演出家のジェームス三木氏はコロナ後の表現様式をどう考える?(写真/共同通信社)

脚本家で演出家のジェームス三木氏はコロナ後の表現様式をどう考える?(写真/共同通信社)

 フィクションにどこまで現実を反映させるかは作り手にとっては大きな問題だ。登場人物がマスクを着け、ソーシャルディスタンスを守り、飲食店は20時で閉店する──そんなリアルな世界を描くべきか、はたまた創作は自由であるべきか。コロナ禍の新たな表現様式について『澪つくし』『独眼竜正宗』などの作品で知られる脚本家で演出家のジェームス三木氏が語った。

 * * *
 私がドラマ制作で学んだのは、数千万人の視聴者が“テレビ画面のどこを見ているか”ということ。

 人間は他の動物と違い、本心を隠してお世辞を言ったり、嘘をついたりする。そのため、相手が敵か味方か見分けるため本能的に相手の顔色や指先のしぐさを用心深く見るんです。

 実際に目の前にいる人の顔をじろじろ見るのは憚られますが、テレビの視聴者は遠慮がないため、画面に出てくる役者の顔を直視する。その顔色や目つきから言動とは裏腹の内心を読み取るのです。

 演出家の和田勉は、人の顔でも灰皿でも本物より大きく映る映画の迫力に負けまいとして、テレビ画面から役者の顔がはみ出るようなズームアップを多用していました。

 ドラマは俳優の表情が命。顔の半分以上を覆い隠すマスクをつけての表現はかなり困難です。

 とはいえ、ドラマは、常に“世の中の変化”との戦いです。

 2015年に脚本を書いたNHKの『経世済民の男・高橋是清』(主演・オダギリジョー)もそうでした。是清はヘビースモーカーだったが、コンプライアンスの観点からタバコを吸う場面はすべてカットされた。同様に私が脚本を担当した泉ピン子主演の『手ごろな女』(1980年、日本テレビ系)も今ならクレームがつきそうなタイトルです。

 インターネットや携帯電話など新たな文明の利器の登場や、かつてはなかったコンプライアンスの問題が次々と出てくる。そのたびに世の中が変わり、表現もそれに合わせて変えていかなければならない大変さは今に始まったことじゃない。

 脚本家は上手くコロナと付き合っていくほかないのだと思います。

※週刊ポスト2021年3月19・26日号

関連記事

トピックス

愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
羽生結弦が主催するアイスショーで、関係者たちの間では重苦しい雰囲気が…(写真/AFLO)
《羽生結弦の被災地公演でパワハラ告発騒動》アイスショー実現に一役買った“恩人”のハラスメント事案を関係者が告白「スタッフへの強い当たりが目に余る」
女性セブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
『ここがヘンだよ日本人』などのバラエティ番組で活躍していたゾマホンさん(共同通信)
《10人の子の父親だったゾマホン》18歳年下のベナン人と結婚して13年…明かした家族と離れ離れの生活 「身体はベナン人だけど、心はすっかり日本人ね」
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン