コロナによる自粛生活や新しい生活様式が「検診・受診控え」を生み、がんや脳卒中など「死に至る病」の初期症状を見逃す一因にもなっている。たかが1年、されど1年。あなたが気づかぬまま病状が進んでいるかもしれないのだ。
患者の自己判断に悩まされているのは歯科治療も同様だ。歯科医が顔を近づけ口中に手を入れることに加え、エアロゾル(唾液の微粒子)による飛沫感染のリスクが指摘されてきた。
世界保健機関(WHO)は「新型コロナの感染が拡大している地域では、歯の定期検診を先送りすることを推奨する」という声明を出した。
日本歯科医師会の調査では、昨年1~6月に歯科治療を中断した患者が約2割にのぼったことが判明している。
生活の一部となったマスクも口内トラブルの一因になりかねないという。東京国際クリニック歯科の清水智幸院長はこう指摘する。
「長時間のマスク着用で口呼吸が習慣になると、口腔内は乾燥し、唾液の分泌量が減って自浄作用が失われてしまう。それによって口内環境が悪化、歯のトラブルが進行します」
岩手県保険医協会が昨年9~10月に、歯科医にアンケート調査を実施したところ、受診を控えることで病状が悪化したと思う事例の有無を尋ねたところ、「あった」と回答した歯科医は68%にのぼった。特に歯周病が悪化した事例が32例と最も多く、虫歯が進行して抜歯などに至った事例も27例あった。
虫歯は自粛生活との“親和性”が高い。
「テレビを見ながらお菓子を食べ続けるという“ながら食べ”をしてしまうと、口腔内が酸性に傾きます。唾液での中和が追いつかなくなると、歯が溶けやすく、虫歯になりやすいのです」(清水院長)