ライフ

高齢者のクレームで公園から子供が消える「歪な環境問題」への危惧

公園の遊具で遊ぶ子どもたち。本来なら、このように子供たちが駆け回るのが当たり前なのだが(イメージ、時事通信フォト)

公園の遊具で遊ぶ子どもたち。本来なら、このように子供たちが駆け回るのが当たり前なのだが(イメージ、時事通信フォト)

 2020年の緊急事態宣言発令時、学校が休みになった子供たちを公園で遊ばせる親子連れの姿が多く見られた。ところがしばらくすると、多くの公園から子供たちの笑い声が消え、いまもそのままだ。各地の児童公園から子供たちの姿が消えたのはなぜなのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「コロナの影響でどこにも行けず、せめて近所で、密にならないよう遊ばせてあげたいと思っていたのですが。あの張り紙が張り出されてからは、ここで遊ぶこと自体、悪いことであるような気がしています。子供を遊ばせる方も本当に減りました」

 千葉県某市在住の牧田亜由美さん(仮名・30代)は、4才と2才の子を持つ専業主婦。保育園終わりの平日夕方、土日や祝日に訪れていた家から最寄りの「児童公園」に、「警告」と赤字で書かれた仰々しい張り紙が掲示されたのは、昨年の秋頃のこと。その警告文には、子供の声がうるさく近隣住人が迷惑している、さらに周辺にはお年寄りがたくさん住んでいて、公園で子供が走り回ったりボール遊びをしては、老人が怪我をする可能性もあるので禁止、そんな文言が「自治会」の名前と共に明示されていたのである。

「公園は市の運営で、張り紙とは別に、公園の使い方について市が設置した看板があります。そこには、深夜や早朝にうるさくしたり、硬いボールを使った球技、ゴルフ、花火などが禁止行為と書かれていますが、自治会警告文はそれ以上に公園での過ごし方を規制するもの。自治会に聞いても『そういう声があるから』というばかりで、市も『自治会さんごとに考え方があるから』と及び腰。一体、公園は誰の物なのか」(牧田さん)

 牧田さんによると、張り紙には「日中であっても、お年寄りに迷惑がかかるから大声を出してはならない」とか「お年寄りに危険が及ぶため、走り回ったり、ボール遊びをしてはならない」などと記してあったという。もちろん、大きな奇声をあげたり、ボールをビュンビュン投げる行為が、迷惑だったり危険だということは理解できた。しかし、お年寄りのために子供は我慢せよ、控えよ、という「警告」はいくらなんでもやりすぎで、まるで「若者は年寄りの言うことを聞け」と強制されているようにも感じている。

 張り紙がされて間も無く、サッカーをしたり、携帯ゲーム機を持ち寄って楽しそうに騒ぐ子供達の姿が減り、代わりにお年寄りがベンチなどでくつろぐ姿が目立ち始めた。すると、親子連れで公園に行くことも、なんとなく後ろめたい気持ちになったと話す牧田さん。住まいから最寄りのいくつかの公園にいつの間にか同様の貼り紙がなされてしまい、気兼ねなく親子で遊べる公園がなくなった実情があるにも関わらず、どこに相談をしても、まるで取り合ってくれないと訴える。

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト