武田良太・総務相(時事通信フォト)
その頂点に立つのが菅首相だ。総務大臣時代から放送・通信行政の制度改革を進め、逆らう官僚は飛ばし、自分に従う官僚を抜擢することで“電波のドン”として大きな影響力を持つ。
菅政権が「携帯料金4割値下げ」を打ち出せばNTTドコモをはじめ携帯各社が横並びで値下げプランを発表し、「家計負担軽減のためNHK受信料を下げるべき」と言えばNHKが従う姿勢を示しているのは、菅側近官僚に「電波割り当て」の権限を握られているからに他ならない。
接待問題の舞台となった東北新社の衛星放送も総務省の裁量行政で恩恵を受けてきた。さらに今回、東北新社の事業認定が取り消されるのは衛星8チャンネルの1つで契約数が約700世帯しかない「ザ・シネマ4K」だけであり、正剛氏が役員を務めていた「囲碁・将棋チャンネル」などは取り消しの対象ではない。
そのことからも、菅政権が放送法違反に問われた東北新社に経営的ダメージが小さい“形だけの処分”を下して幕引きを図ろうとしていることがわかる。
※週刊ポスト2021年4月2日号
高橋洋一・嘉悦大学教授(時事通信フォト)