「春うらら」とは裏腹に、乾燥や強風で3月や4月は火災が多い季節としても知られる。いくら自分が注意していても隣の家、あるいは隣の隣の家が火事になれば、火の粉がわが家に降りかかることも……。もし火事になってしまったらどうすればいいのか?
避難をする際は、ただやみくもに逃げればいいわけではない。
「まずチェックすべきは、炎が揺れている方向です。その揺れの逆である風上に逃げることが大切です。風下に向かって逃げると煙が自分に迫ってくるので、逃げている間に煙を吸い込むリスクが高まります」(防災士)
火事で怖いのは「火よりも煙」だとよくいわれる。煙を吸い込むことで一酸化炭素中毒や窒息になり、命を落とすケースもあるからだ。特に深夜や早朝の火災は、眠った状態のまま煙を吸い込んでしまい、そのまま死にいたるケースもあるので要注意だ。
住んでいるのがマンションの場合、避難するために出火した家の前や廊下を通らなければならないことも考えられるが、焦ってはいけない。理学博士で火災鑑定人の鈴木弘昭さんはこう言う。
「火の粉が飛んでくるような状況では、毛布などを頭からかぶって体への燃え移りを防ぎます。アクリル製のものは熱で溶けて危ないので、必ず水で濡らしてください。炎の中を突っ切らなければいけないようなときでも、濡らした毛布を手に巻けば、手のやけども防げます。燃えている廊下を走り抜けるくらいの一瞬の時間なら、対処できるでしょう」(鈴木さん)
高層階でも避難のときにエレベーターを使うのはNGだという。火災で電気系統がダウンしたら、中に閉じ込められてしまうからだ。火が上がってきていなければ、非常階段か屋内階段を使っての避難が確実である。
「煙が上ってきていたら、口に濡らした布を当てたり、袖で煙を防いで逃げましょう。大人の足なら急いで下りれば、7階から1階まで1分程度で避難できるので、仮にその間に煙を吸い込んでも健康上それほど問題はありません。もし炎が階段を上がってきているような状態なら、階段を下りず、屋上に避難して救助を待つ方がよいでしょう」(鈴木さん)