いま読むと忘れていた感性が蘇ってくる

「大人こそ絵本を読もう」と呼び掛けているノンフィクション作家の柳田邦男さんは、大人が絵本を読む効能についてこう話す。

「絵本は、自分の経験を重ね合わせるだけでなく、仕事や子育てなどに追われて忘れてしまっていた、ナイーブな、とても豊かな感性をふっと蘇らせてくれます。他者への思いやりや人の心を汲み取る大切さなど、人が生きる上で忘れていた大切なことも思い出させてくれます。

 そして読んだ次の日には、いままで生きてきた日々と違う日を送ることができる。絵本にはそんな作用があります」(柳田さん・以下同)

 そうした力のある絵本のひとつとして柳田さんは『会いたくて会いたくて』を挙げた。同書は、老人ホームに住む大好きな祖母に会いたいと望む主人公の少年ケイちゃんと祖母とのやりとりを描いた作品。

 面会はできないけれど、たったひとりで会いに来てくれた孫に、おばあちゃんは部屋の窓から、糸電話を投げおろす。そして糸を通して、おばあちゃんは孫にこんなふうに諭すのだ。

《会えない分、思いは強くなるよ。その人のことを心のそこから考える時間がタップリあるからね》

《大切なのは人を思う心。気持ちが強ければ、行けなくても会えなくても、いろんなものがキラキラと輝いて見えてくる》

「これはいまのスマホ文化に対するアンチメッセージでもあり、最高のメッセージでもあると私は思います。現代は、相手の言葉をじっくりかみしめたり、深く思って考えたりすることなく、連絡を取りたいときはSNSですぐにつながることができる。でも、それで本当に思いはつながっていると言えるのか。人間の根源的な心の通い合いってなんだろうか。そうした人生で大事なものを忘れていませんか?と、この絵本は問いかけている気がします。

 コロナ禍で会いたい人に会えず、つながりが薄くなったような錯覚に陥りますが、会えなくても、手紙などで思いを伝え、共有し、相手のことをじっくりと考えることはできます。むしろ時間や手間を掛けることで気持ちを思いめぐらせたり、深いところで気持ちを共有したりすることもできるようになる。そんなことも考えさせられました」

 柳田さんに、ぜひ書店に行って自ら絵本を探してほしいと、こう続ける。

「絵本を、人生のひとつの道案内役のようにして、週に1回、せめて月に1回でも書店に立ち寄って、あれこれ見てみてほしい。そうして選んだ一冊を、ゆっくりとページを繰りながら読み返してみてください。年に12冊、それを5年続ければ60冊。これは、一生の心の財産になります」

※女性セブン2021年4月8日号

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」の会長である永谷晶久さん
《都道府県魅力度ランキングで最下位の悲報!》「埼玉には『うどん』がある」「埼玉のうどんの最大の魅力は、多様性」と“埼玉を日本一の「うどん県」にする会”の会長が断言
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン