イギリス型の変異株(国立感染症研究所提供、時事通信フォト)
小林:変異していくうちに、だんだん弱毒化していくっていうよね。強毒化すると、宿主が死んだり、重い症状で動けなくなったりして、感染が広がらなくなるので、結果的に弱毒化したウイルスだけが広がると。
宮沢:その通りで、弱毒化したウイルスのほうが広がりやすい。ウイルスには意識も戦略もなく、どっちが有利かを考えたりしないので、変異して強毒にいく方向と弱毒にいく方向はイーブンですが、強毒に進んだウイルスは宿主を動けなくするので、医療従事者や家族など近い人にうつるかもしれませんが、そこで止まる。弱毒化したウイルスは、軽症で宿主が動き回れるので、感染を広げられる。だから、弱毒のほうが広まりやすい。
今回の変異型は、宿主細胞の受容体と結合しやすいとされています。だからといって感染が広がりやすいとは限らなくて、結合が強すぎると今度は離れにくくなり、ウイルスは離れないと外に感染を広げられませんから。適度な強さが必要なんです。
今回の変異型はそれなりに広がっているようなので、広まりやすいといえそうですが、強毒化しているか、弱毒化しているか、今のところまだ見えない。というか、今広がっているコロナウイルスはすでに弱毒化しきっているので、これ以上、弱毒にならないかもしれない。
小林:そういう見方もあるのか。
宮沢:変異型が怖い怖いとギャーギャー騒いで、イギリスやブラジルからの侵入を止めろ、みたいな話になっていますが、あれと同じ変異は日本でも必ず起きますからね。
小林:どういうこと?
宮沢:鎖国したって、日本でも同じ型が必ず生まれるということです。だって、年がら年中、ランダムに変異が起こっていくんですよ。その中で感染を広げるのに有利だったのが、イギリスで広がった変異型なんです。日本国内のどこかの誰かの体の中で、いつか必ず生まれて、それが本当に強いんだったら、増えていきます。当たり前です。
日本でも見つかって、報道では「渡航歴がないのに」「誰から感染したかわからない」と騒いでいますが、海外から入ってきたのではなくて、国内で生まれていても不思議ではない。