一方、30年ほど前、初当選したばかりの河村氏にとって、中内氏は「頭の上がらない」存在だったことでしょう。「河村さんも早く中内さんから独り立ちしないとな」と皮肉交じりにからかう人もいました。会社でも組織でも、切れ者すぎる部下がいると上司はやりにくいもの。でも河村氏はずっと中内氏と離れなかった。公設秘書の定年は65歳ですが、定年後は私設秘書として雇い続けました。 河村氏の長男で秘書を務める河村建一氏(45)はこう語ります。
「中内さんは常々『田中龍夫の後継者を立派に育てなければいけない』と話していました。父にとってやりにくかった部分もあったと思いますが、それ以上に、存在そのものに元気をもらえる。事務所にいるだけで活気が出るんです」
そんな建一氏自身も手厳しくやられるそうです。
「父が麻生内閣で官房長官になって、私が官房長官秘書になって、周囲は一目置いてくれるじゃないですか。でも中内さんの前でちょっとでも調子に乗ると、『何偉そうなこと言ってるのよ。私の膝の上でおしっこしたくせに』とくるんですよ」
そんな中内氏ですが、最近事務所で姿を見かけません。河村氏に尋ねたところ、「大みそかに病気をしてな。体はもう元気なんだが、言葉がうまく出ないんで、そのリハビリの施設に行っているんだ」とのこと。
また事務所に戻ってくるのかと聞くと、
「おう、そうよ。あの席はずっととってあるからな」
永田町の一角、衆議院第二議員会館3階302号室。田中氏、河村氏と引き継がれたその部屋の一番奥、広い窓際の特等席に、中内氏はきっと戻ってくるはずです。そのときはぜひ聞いてみたい。
「森さんの発言、どう思いますか?」