スポーツ

羽生結弦がAI採点を提言 後輩のために“採点のブレ”をただす狙いか

エキシビジョンでは復興支援ソング『花は咲く』で、祈りの舞を披露(写真/アフロ)

エキシビジョンでは、復興支援ソング『花は咲く』で祈りの舞を披露した羽生(写真/AFLO)

 取材では毎回、自分の口から発する言葉を一つひとつ確認するように丁寧に話す羽生結弦選手(26才)が、国別対抗戦(4月15日~18日)を終えてきっぱりと断言したのは、2022年の北京五輪のことは考えていないということだった。3月の世界選手権では、ジャンプについての「GOE(出来栄え点)」が低すぎることが話題になったが、国別対抗戦でも、羽生自身が「いまできるベストの3回転アクセル」というジャンプの点数は伸び悩み、女子シングルの紀平梨花選手(18才)や坂本花織選手(21才)の採点についても「厳しすぎる」という声が多く上がった。「北京五輪のことは考えていない」と断言した裏には、こうした採点競技としてのフィギュアスケートに、“限界”を感じた面があるのか。

 羽生選手は昨年、早稲田大学人間科学部通信教育課程を卒業したが、その卒業論文は学術誌にも掲載された。卒論の掲載は異例のことだという。

 そのなかで羽生選手は、フィギュアスケートの採点制度が《その試合の審判員の裁量に委ねられている部分が大きい》と指摘。さらに、自らの手首やひじの関節など最大32か所にセンサーをつけ、ジャンプなどの動きをデジタルデータ化する研究を行った結果、AIによって《ジャンプに関してだけでなく、ステップやスピンなどの技術的な判定は完全に(デジタル化)できるように感じた》と書いている。

 だが、実際には技の「基礎点」についてさえも、人間の“主観”から抜け出せないのが現状だ。羽生選手が目指す4回転半について、国際スケート連盟は「12.5点」と規定しているが、この基礎点に対しては、「3回転や4回転ジャンプの基礎点に比べて、明らかに低すぎる」(フィギュアスケート関係者)との批判も多い。

 2017~2018年シーズンまでは「15点」だったが、羽生選手が4回転半への挑戦を公言し始めた時期になぜか「2.5点」も減点されてしまったのだ。元国際審判員のAさんはいう。

「そうした採点のブレが続いたことで、羽生選手は“もう点数や勝ち負けにはこだわりたくない”という心境に至ったのではないでしょうか。卒業論文でAI化を提言したのは、後輩たちのために“不公正のない未来”を描いてあげたいという思いがあるからでしょう」

 そして現役選手としての最大かつ最後の目標は、4回転半の点数ではなく、あくまでも、“初めて成功させる”ことにあるようだ。Aさんはこう話す。

「もちろん4回転半が成功すれば北京五輪での金メダルはぐっと近づきます。でも、北京五輪が“頭にない”というのは、彼の本音でしょう。もしかすると、4回転半を完璧に成功させたらどんなに小さい大会だったとしても、“これが僕の最高傑作です”と言って引退してしまうかもしれません」

 そんな見方を裏付けるかのように、羽生選手は国別対抗戦の練習で、4回転半に挑み続けた。いずれも転倒や回転不足に終わってしまったが、本人はその意図をこう語った。

「試合会場でやることに意義がある(中略)刺激があるなかでやった方がイメージが固まりやすい」

 4月28~30日に青森県八戸市の「フラット八戸」で開催されるアイスショー「スターズ・オン・アイス」の一般向けチケットの販売が4月18日に始まり、売り場には開店前から長蛇の列ができた。転んでも起き上がり、また転んでも起き上がる彼の姿は日本中、いや世界中の人々の「光」になる。

※女性セブン2021年5月6・13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン