“強い骨を作る”“背を伸ばして丈夫な体になる”。そんな枕詞とともに、牛乳は60年以上にわたって学校給食の友として供されてきた。カルシウムやたんぱく質など成長に欠かせない成分が豊富であるゆえ、それは理にかなった献立である。しかしその一方で、「牛乳が飲めない」と顔をしかめる人も少なくない。神奈川県在住の主婦・Aさん(45才)は給食の時間が憂うつだったと振り返る。
「いつも牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロ鳴って、昼休みは遊ぶどころじゃなかった。クラスメートの目を盗んでトイレに駆け込んでいました。大人になってからはほとんど飲んでいなかったのですが、この前試供品でプロテインをもらったから久しぶりに牛乳に混ぜて飲んでみたけれど、やっぱりすぐにお腹を下してしまいました……」
Aさんのような例は少なくない。星子クリニック院長の星子尚美さんは「実は日本人の体に乳製品はあまり合っていない」と指摘する。
「牛乳を飲んだ後、お腹の調子が悪くなったり下痢をしたりする状態のことを『乳糖不耐症』といいます。これは乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素である『ラクターゼ』の分泌量が少ないことによって起きる。
近代になるまで、歴史的に乳製品を摂ってこなかった日本人は、約85%もの人が離乳期以降になるとラクターゼを分泌しなくなる。つまり、私たちにとって牛乳は『健康食品』ではなく『嗜好品』に入ると思った方がいい。たんぱく質やカルシウムが摂れるイメージがあるかもしれませんが、その分、脂肪も多く、動脈硬化を促進させてしまうデメリットもあります」
ひるがえって欧米人は8割以上がラクターゼを持っているというデータもあり、乳製品をしっかり活用できるかどうかには人種の差による体内の酵素や腸内細菌の違いもあるようだ。
※女性セブン2021年5月6・13日号