閉鎖された東関部屋(時事通信フォト)

閉鎖された東関部屋(時事通信フォト)

 イベント参加や稽古見学など地元の観光振興に貢献すると判断し、区は受け入れを決めたという。

「先代に高額の賃料を払う負担が大きく、区有地などに移転先を求める動きが出てきているのではないか」(前出のベテラン記者)とみられている。

 相撲部屋を開くのにカネがかかりすぎるという問題は、以前から指摘されていた。2011年に協会の公益財団法人化に向けた改革案を答申した「ガバナンスの整備に関する独立委員会」で副座長を務めた慶応大学商学部の中島隆信教授はこう言う。

「当時の独立委員会でも相撲部屋のあり方は問題視されていた。公益法人となる以上、部屋の存亡が個人の財力によって左右されてしまうのは問題がある。そうならないように協会が手立てを講じる必要があると考え、答申にも盛り込みました」

 答申では、「協会が部屋に対して家賃相当の費用負担をする責務がある」といった提言がなされた。土地・建物の所有者や担保権者も協会が認める法人・個人に限るという案も記されている。

「資金がないからと継承のたびに部屋が家賃の安いところに移り、元の場所がチャンコ料理店やマンションになっていたら、伝統を維持できません。協会が費用を負担し、両国に部屋を再結集させるような改革が必要というのが、委員会の意見でした。しかし、当時の北の湖理事長は、“部屋は親方の個人財産であり、協会の持ち物にはできない”と頑として譲らなかった。結果、部屋を継承するためには実績や能力よりお金ということになった。公益法人として、適切であるはずがない」

 こうした指摘や多くの相撲部屋の所有者が現在の親方ではないことについて、協会に見解を問うたところ「お答えすることはありません」とするのみだった。

 部屋や力士を“個人資産”にしているようでは角界に未来はない。

※週刊ポスト2021年5月21日号

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