表から見える「親方」と、その裏にいる「オーナー」が異なる場合、トラブルに発展するケースもある。
「2011年に元横綱・隆の里が59歳で亡くなり、鳴戸部屋を元前頭・隆の鶴が継承した。後の横綱・稀勢の里や大関・高安が弟子として所属していましたが、資金面の問題で先代の遺族とトラブルになった。その結果、2013年に元・隆の鶴は別の年寄株『田子ノ浦』を取得。先代遺族が所有していた千葉・松戸市の鳴戸部屋を飛び出し、新たに江戸川区で田子ノ浦部屋を開いた経緯がある」(同前)
これから部屋を開こうという親方衆も、こうしたリスクと隣り合わせになる。
3月場所中に引退した元横綱・鶴竜は、横綱経験者が5年間、現役時代の四股名のまま協会に残れる特例を利用している状況だが、2019年に亡くなった師匠である井筒親方(元関脇・逆鉾)の株を継ぐとみられている。
「『井筒』の株は時津風部屋付きの元関脇・豊ノ島が借株として襲名しているが、いずれ鶴竜に戻す予定。すでに“井筒部屋再興”の準備は進んでいる。元・逆鉾の時代の井筒部屋は耐震問題もあって取り壊され、更地となっている。そこに新しい部屋を建てようとしている。
現地の看板には、〈共同住宅(相撲部屋付)〉とあり、建築主は先代の未亡人。この4月に着工したばかりで、来年3月末に完成予定だ。相撲部屋の上層階に12戸の賃貸マンションが併設されるという。先代のおかみからこの物件を鶴竜が買い取るか、賃料を払いながら部屋を運営するとみられている」(後援会関係者)
鶴竜がそこまで道筋が見えている一方、数字のうえでは遥かに上回る横綱・白鵬は先行きが見通せない。一代年寄の襲名は絶望的となり、継承できる見込みの年寄株も手当てできていない。
「白鵬は、部屋開設を見据えて内弟子を取ったり、相撲強豪校とのパイプを作ったりしてきた。資金力はあるので、物件は自己所有でやれるはずだし、そのための用地もすでに探しているというが、その前の株取得の段階でつまずいている」(前出・ベテラン記者)
国技を守る協会において、金銭やしがらみによって、部屋を開けるかが決まる仕組みが健全とは言えまい。
10年前にも問題化
その他に親方の親族名義の物件が2部屋、民間企業などからの賃貸が6部屋となっていた。
親方と別に部屋の所有者がいる状態だと、“引っ越し”で場所がコロコロ変わりがちだ。今年4月に閉鎖された東関部屋が入っていた建物には、5月初めに埼玉・所沢市の賃貸物件から二子山部屋(元大関・雅山)が移転した。建物は先代の東関親方の遺族が所有し、土地は葛飾区の区有地だ。区の契約管財課はこう説明する。
「東関部屋からは、50年契約で賃料をいただいていました。現在、二子山部屋と引き継ぎ作業を行なっています。同様に九重部屋(元大関・千代大海)が区有地の上にあります」