ライフ

新作『非弁護人』発表の月村了衛氏「作品に昇華させるしかない」

月村了衛氏が新作を語る

月村了衛氏が新作を語る

【著者インタビュー】月村了衛氏/『非弁護人』/徳間書店/1870円

 大衆文芸の王道に連なる設定や筋運びと、目を背けたくなるほど醜悪で邪悪な「今、ここ」のあり様──。そんな対極的ともいえる要件の両立を真骨頂とする月村了衛氏の新作『非弁護人』の魅力もまた、元東京地検検事でありながら法曹界のアウトサイダーとして生きる主人公〈宗光彬〉の設定に尽きると言えよう。

〈今の自分は、法と無法の境に立って、法に従う非弁護人なのだ〉とあるように、反社会勢力を顧客に持ち、高額な相談料を得る宗光は、元同僚のヤメ検〈篠田〉にすれば屑も同然。が、法の外側にいてこそできることもあり、東十条のパキスタン料理店で出会った8歳の少年〈マリク〉から、家族共々姿を消した同級生〈安瑞潤〉の捜索を依頼された彼は、やがて食いつめた元ヤクザや在日外国人を食い物にする〈ヤクザ喰い〉の正体に迫り、暴力ではなく法廷で闘うのである。

「今作を書くにあたってまず頭に浮かんだコンセプトが、このヤクザを食い物にする『ヤクザ喰い』という文言と、法曹界のブラックジャックという2つでした。

 一般に弁護士というのは、各弁護士会への加入が必要で、宗光のように犯罪歴があるとどんなに優秀でも拒否されてしまう。弁護士以外による非弁活動が禁じられる中、法の埒外に置かれながらも法に則り、リーガルに闘うダークヒーローという設定はかつてなく、相当に面白いんじゃないかと。

 また暴排条例の施行(2010年)以降、ヤクザの人権問題は最近注目されてもいて、ヤクザの家族、特に子供たちは悲惨な状況にあります。要領の悪い組員はリストラの対象になり、銀行口座が作れないため転職や転居も難しいとなると、それでなくても差別や偏見に喘ぐヤクザの子供の生活はどうなってしまうのか……。

 その2つの着想から生まれたのが本書で、今思えば不寛容な日本社会に対する私自身の怒りが形となって現れたような気もします」

〈世界が清潔であったことなど歴史上一度もない〉

 それが6年前、〈習志野開発〉による用地不正取得の捜査に着手した途端、内部告発者を自殺に追いやられ、ありもしない受託収賄の罪を負わされた宗光の実感だ。

 冒頭、台東区の倉庫で覚醒剤2キロが押収され、〈縣組〉の組員が関与を疑われた裁判の場面が、出所後は弁護士にもなれず、裏社会の法律相談でしのいでいる宗光のリーガルな思考回路を映し、しょっぱなから興味深い。彼は提出された証拠について盗聴など検察側の違法性をつき、なんと判決を覆してしまうのだ。

「非弁護人の彼が担うのは論理構成までですけどね。習志野の一件で正義を全うしたはずの彼は、最高検のお偉方や同期の篠田にすら裏切られ、法廷での居場所そのものを失ったんです」

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン