郊外百貨店が続々閉鎖に追い込まれたワケ
ではどうして地方・郊外店の売上高が下がり閉鎖されるようになったのかというと、大型ショッピングモールの登場と普及によるものでしょう。特に百貨店がメイン商材としていたアパレル分野で、百貨店向けブランドとショッピングセンター向け低価格ブランドの商品の「デザインなどの見た目」が大きく変わらなくなったことも大きな要因と考えられます。
郊外のショッピングモールに客を奪われた百貨店(時事通信フォト)
かつて、2005年ごろまでは低価格ブランドと百貨店向けブランド・ファッションビル向けブランドは価格差に応じて、デザイン・色・柄など「商品の見た目」に大きな差がありました。トレンド情報は同一ですから、同じデザインソースなのに商品の見た目がまったく異なっていたのです。
これは15年ほど前までのユニクロの商品の色合いを思い出してもらえば理解できるのではないかと思います。白・グレー・黒・紺などのベーシックカラーは遜色ありませんでしたが、パープルや明るいグリーンなどアクセントとなるカラーだとユニクロ商品はオシャレ感のない色合いでした。大型スーパーやその他、低価格ブランドの商品でも似たような品揃えでした。
ですから、ファッションに興味のある人は高くても百貨店やファッションビルで買っていたのですが、それが2000年代後半になると、見た目もあまり変わらなくなります。
もちろん縫製仕様や仕様素材には差がありますが、衣料品は縫製仕様や使用素材だけが決め手となって購入するわけではありません。やはり色・柄・デザイン・シルエットなどが最重要視されます。この差がなくなれば「低価格品でも構わない」と考える消費者が多数出てくるのは自然な流れでしょう。
そして、そうした進化した低価格ブランドを多数集積したのがイオンモールを始めとする郊外型の大型ショッピングセンターでした。片や相対的に売り場面積が小さく、品揃えが少ない地方・郊外型百貨店がショッピングセンターに客を奪われるのは当然の結果です。