自主企画製品開発、ネット通販の先行き
次に百貨店生き残りのカギになると言われているのが、自主企画製品の開発です。ただし、この取り組みの必要性は高いものの成功率はかなり低いのが現実です。じつは百貨店は過去何十年間も散発的に自主企画製品の開発に取り組んできましたが、いまだにどの百貨店も成功していません。
例えば2016年に「SPA宣言」をした三越伊勢丹でしたが、2019年1月末には19年間続けたオリジナルブランド「BPQC」の春夏シーズンでの廃止を発表しています。百貨店の人間はトップから現場までモノ作りの仕組みへの理解が浅いこと、百貨店の人間に備わっている仕入れる能力は、商品を一から企画する能力とは合致しないこと──などがその要因として考えられます。
しかし、差別化の最も有効な手段は「独自の商品を用意すること」です。
例えば、ユニクロの商品はユニクロ店舗以外では買えません。ですからユニクロの「エアリズム」が欲しい人はユニクロの店舗かネット通販でしか買うことができないのです。これが最も簡単な商品の差別化です。
コロナ休業を機にビジネスモデルの転換が求められる百貨店(時事通信フォト)
最近は百貨店のネット通販に期待をかける向きもありますが、基本的に百貨店はメーカーブランド、ナショナルブランドを仕入れるため、ネット通販もそういう品揃えになります。
仮にリーバイスのジーンズが欲しい人がいたとして、リーバイスファンなら何も百貨店のネット通販で買う必要はまったくなく、リーバイスの直営サイトで買っても構いませんし、楽天やZOZOTOWNなどのECモールに出店しているリーバイスネットショップで買っても構わないのです。筆者も百貨店のネット通販ではなく、割引率が最も高いネットショップか、ポイントが最も貯まりやすいネットショップで買います。
ネット通販の強化が百貨店の起死回生策とは思いませんが、もしネット通販の強化を最優先課題と設定するのであれば、商品の独自化も同時に求められることとなり、自主企画製品の開発は必須になります。
現状で比較的容易に手を付けられるのが外商の維持・強化なので、百貨店はまずこちらに注力し、苦手とする自主企画製品の開発は腰を据えて取り組んでもらいたいと思います。