ビジネス

『ザ・シュガー』『投稿写真』…大ヒット連発のサン出版40年の歩み

サン出版40年の歩みが掲載された『サン出版社史』

サン出版40年の歩みが掲載された『サン出版社史』

 かつて「エロ本の総合デパート」と呼ばれたある出版社の社史が制作され、300部限定で関係者に配布された。そこに記録された創業秘話や沿革、そして創業者の強烈な個性がすこぶる面白い。編纂者らの許可を得て、“日本一スケベな社史”を特別に紹介しよう。

『サン出版社史』には、創業の1972年から看板を下ろす2013年までの40年以上にわたる同社の刊行物と当時のエピソードがふんだんに盛り込まれている。そこには創業者の故・宮坂信・元会長の強烈な人物像とともに歩んだ歴史が刻まれていた。ほかに例を見ないエロ本出版社の社史をなぜ作ることになったのか。1974年に入社し、宮坂氏の元で長年編集に関わった櫻木徹郎氏が語る。

「宮坂会長が18年に逝去したのですが、かしこまった葬式やら送る会は勘弁という人だったので、供養の代わりとして制作しました」

 エロ本史に名を残すサン出版の歴史と宮坂氏の足跡を社史から紐解いてみよう。

「売れればなんでもいい」

 戦後に創業されたエロ本出版社の老舗、東京三世社の社員でありながら『週刊新潮』の創刊にも携わっていた宮坂氏は、1972年に東京・四谷でサン出版を創業した。当時の柱は『S&Mコレクター』だった。宮坂氏は東京三世社時代にSM誌で起用していた団鬼六や須磨利之など当時のSM業界で著名な作家たちを登場させた。

 この時期に創刊したのは、実話誌、ピンク映画専門誌、エロ劇画雑誌などもあった。「売れればなんでもいい」という宮坂氏の号令のもと、ジャンルやカテゴリーにとらわれずにサン出版は発行物を増やしていった。「エロ本の総合デパート」の呼び名はこの時期から始まっていた。一方で主軸としていたSM雑誌ブームに陰りが見え始めると即座に撤退するなど、当時から引き際も早かった。

 サン出版が扱ったのは女性の裸だけではなかった。2年後の1974年、ゲイ雑誌『薔薇族』の人気を聞きつけると、宮坂氏は三世社時代の部下だった櫻木氏を招聘し『さぶ』を創刊させる。

 また、「女性向けのエロ本を」と1978年に創刊したのが、美男子たちの恋愛を扱った『June』だった。『風と木の詩』で少女漫画界に耽美性をもたらした竹宮惠子や中島梓(栗本薫)を柱に、林真理子や南伸坊なども執筆に参加した。現在のボーイズラブ、かつての“やおい”の源流となる「June系」なるジャンルを作り出した。

 なお創刊時の誌名は『JUN』だったが、某アパレルメーカーから物言いが入り変更を余儀なくされたという。また、『FOCUS』そっくりの体裁の『LOOK』という写真誌もあるほど「二番煎じ上等」の社風だった。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン