なんでも、書類がすんなり通らなかった原因は、三つ折りの書類を私が二つ折りにして出したからだそうで、それだけのことなのに……こちらとすれば、受理されない理由がわからないし、私にわかるように説明してくれない。そこで、思いつく限りの書類をあれこれ出しては、先方に電話をして確認する。これを繰り返している間は、生きた心地がしなかったものね。
そんなことがあって、役所との間をこじらせている(と思っている)私は、ワクチン接種でも、役所からの書類を開く段階ですでに身構えている。それで「高齢者」という文字にすぐカチンと来た。「高齢者」という誰も喜ばない3文字を役所はなぜ入れるのよ、と腹が立って仕方がないんだよね。
いっとき、役所の別の書類に「後期高齢者」と書いてあって、私の身近でこの年齢に達した人はみんな「後期はないよ。あんたの寿命はそろそろ尽きてきたね、なんてなんで役人に言われなくちゃなんないの!」と怒っていたっけ。もうちょっと気を使ってよと思うわけ。そもそも役所の職員の定年は60才。高齢者と呼ばれる人間の気持ちなんかわからないまま、退職しちゃうのよ。ホント、納税者に愛情があったら、こんな無粋な言葉、使うかな。
カチンと来たまま、区役所に電話で問い合わせたら、アララ。なんとも感じのいい女性職員が出て、私が見るべき項目は「令和4年3月31日時点の年齢」だったことをさりげなく教えてくれたんだわ。ひとくさり苦情を言いはしたけど、「すみません。わかりにくいですよね。必ず上に伝えます」と私の言い分を全面的に受け入れてくれたから、ちょっと溜飲が下がった。
それにしても今回のワクチン接種は、私のような人間にとっては、注射の恐怖体験を苦手な役所に予約を入れてまで志願するということ。拷問でしかないって。その予約の電話もつながらないっていうじゃないの。
そんなことを電話の向こうの女性職員に話しているうちにひらめいたの。予約をいまここでしたら、少なくともハードルの1つは解消するではないかと。
「はい、この電話で予約を承ります。券番号が書いてある書類がありませんか。そうそう、それです!」
すっかり打ち解けた職員さんと、1回目と2回目のワクチン接種の日時を決めちゃった。そんなわけで、6月第1週にワクチン接種をすることにした私。どうなることやら。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする
※女性セブン2021年6月24日号