ウレタン系マットレスは洗えないとされている。一般的なコイルスプリングマットレスにもウレタンは使われており、やはり洗えない。7年間洗わなかったマットレスからは1平方インチ当たり細菌の集団が1600万個以上も検出された
マットレスに、せっせと除菌スプレーを吹きかけている人もいるだろう。しかし、スプレーが除菌効果を発揮するのは、マットレスの表面だけ。マットレスの内部に潜むダニや細菌を退治することは難しい。
同じく、布団クリーナーも表面の細菌に効果はあっても、分厚いマットレスの内部までしっかりと除菌できているとはいいがたい。
そのような背景から、近年、寝具メーカーは、こぞって“中まで洗える”マットレスを発売している。
「たとえば、アイリスオーヤマの『エアリーマットレス』は、東洋紡のエアロキューブという特殊素材を使用。通気性がよく、カバーを外して中材まで水洗いが可能です。同じくエアウィーヴは、中材は独自の樹脂製素材・エアファイバーが使われていますし、無印良品にも『洗えるマットレス・固クッション』という商品があり、いずれも中材まで水洗いできます」(寝具業界に詳しいジャーナリスト)
時には中まで洗えたほうがいい
水洗いの効果とはいかほどなのか。
前出の尾家教授は、マットレスの残存菌に関する研究を行っている。ウレタン系マットレスやウレタンを使用したコイルスプリングマットレスなど、洗えると謳っていないマットレスと、中材まで洗えるエアウィーヴのエアファイバーにそれぞれ大腸菌を付着させて、その後30秒間水洗いをしたところ、ウレタン系のマットレスには多くの大腸菌が残ったが、エアファイバーに残った大腸菌はほぼゼロだった。
水洗い可能なエアファイバー
「エアファイバーは、水で中まで洗える上に乾きやすい。そのため、菌が残らなかったのでしょう。一方、ウレタン系のマットレスは、構造的にどうしても洗いにくいんです。食器洗いやお風呂掃除に使うスポンジを想像すると分かりやすいのですが、スポンジと同様、表面に小さな穴があるのでそこから汚れが入り込みやすく、逆に中までしっかり洗い流すことが難しい。乾きにくいこともあり、内部が湿ったままだとそこから菌が繁殖してしまうのです」(前出・尾家教授)
エアファイバーはエアウィーヴのマットレスのみに使われているが、丸洗いの方法はシンプルだ。カバーを外し、中材を取り出す。浴室などで40℃以下のお湯と中性洗剤を使ってシャワーでしっかり洗い流し、陰干しで乾かす。もちろん、カバーも洗剤を用いて洗濯できるので、マットレス全体を清潔に保つことができる。
「衛生面を考えれば頻繁に洗うに越したことはないですが、簡単とはいえ時間はかかるので、1か月に1度ほど洗えば、ある程度の清潔さは保たれると思います。もちろん、おもらしや嘔吐などで汚れた場合は、その都度丸洗いして汚れを落とすのが良いでしょう」(前出・尾家教授)
長年、医療機関における衛生管理を研究してきた尾家教授は、病院などでもマットレスに残る汚れを目にしてきた。
「マットレスのカバーを外してみると、以前使っていた患者さんの血液や尿などの汚れが染み込んでいることもあります。当然、こまめにシーツを替え、患者さんの身体に直接触れる部分は清潔を保っていますが、マットレスの内部までとなると難しいのが現実です。
入院中の患者さんは免疫力が低下しており、健康な人に比べてさまざまな感染症にかかるリスクが高いですし、ベッドは患者さんにいちばん近いものだからこそ、清潔であってほしい。そう考えると、やはり中材まで洗えるマットレスが望ましいといえるでしょう」(前出・尾家教授)
昨年からは、新型コロナウイルスの影響もあり、「寝具の清潔」はあらためて注目を集めている。また、コロナ感染のリスクを下げるために、喘息や皮膚炎などで病院に頻繁に通うことは避けたいと考える人もいるだろう。安心で快適な生活のために、また、病気にならないために、中まで洗えるマットレスの導入を検討してみるのもいいかもしれない。
※女性セブン2021年7月1・8日号