国内

「陛下が五輪開催にご懸念」 絶妙なタイミングだった宮内庁長官の発言

2020年の一般参賀の天皇皇后両陛下(写真/アフロ)

2020年の一般参賀の天皇皇后両陛下(写真/アフロ)

「国民の間に不安の声がある中で、ご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします」──。6月24日、宮内庁の西村泰彦長官は定例記者会見で、突然、しかし淡々と語った。ざわついたのは、宮内庁担当記者たちだ。気づけば1年以上、天皇陛下から五輪についてのおことばを聞く機会がなかった。記者が発言の意図を改めて尋ねると、西村長官は「私の拝察です」とキッパリ。

 狐につままれた形となった担当記者は、「仮に拝察だとしても、これが報道されるとかなり影響があると思うが、そのまま発信していいのか?」と、問うのが精いっぱい。西村長官は動じない。「はい。オンレコ(公表してよい)と認識しています」と答える。

 担当記者は「軽い気持ちではない?」と再々度確認。西村長官は「陛下はそういうふうにお考えではないかと、私は本当にそう思っています」と返答。あまりの堂々たる態度に、宮内庁担当の記者らは、それ以上これについて問うことをやめた──。

 その直後から、長官の言葉は一斉に報じられ、瞬く間に世間に波紋を広げた。菅義偉首相、加藤勝信官房長官、丸川珠代五輪担当相が、ただちに「宮内庁長官ご自身の考えを述べられたもの」と口を揃えたが、国内のみならず、海外メディアもそうは受け取らなかった。

「米紙『ワシントン・ポスト』は、“東京五輪は天皇から重大な不信任票を投じられた”と報じました」(全国紙記者)

 海の向こうの報道を、事情をよく知らない海外メディアの見当違いとは言い切れない。

「そもそも、憲法上、天皇に政治的発言は許されません。だからこそ、これまでも天皇の踏み込んだ考えを表明する際には、直接ではなく、宮内庁長官がその内心を推察して“代弁”する形がしばしば取られてきました。今回もそうであったと考えるのが自然です」(宮内庁関係者)

開会宣言で祝うリスク

 象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんもこう解説する。

「西村長官は、陛下の了解を得て、陛下の考えを反映させて発言したことは間違いないでしょう。陛下は、ご自身の発言の影響力を充分に理解されていて、日頃から言葉を慎重に選ばれる。その陛下が、微妙な状況にある東京五輪について、踏み込んだ“拝察”の公表を了解されたことに驚きました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
モサドの次なる標的とは(右はモサド長官のダビデ・バルネア氏、左はネタニヤフ首相/共同通信社)
イスラエルの対イラン「ライジング・ライオン作戦」を成功させた“世界最強諜報機関”モサドのベールに包まれた業務 イラン防諜部隊のトップ以下20人を二重スパイにした実績も
週刊ポスト
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン