長野五輪でスキージャンプを観戦される皇太子ご夫妻(現在の天皇皇后両陛下、1998年2月=時事通信フォト)
陛下は、開催が近づく東京五輪について沈黙を貫かれてきた。コロナ禍以前の2019年の誕生日会見では《大変楽しみにしております》と述べられながら、2020年2021年の誕生日会見では話題にされなかったのだ。なぜ、このタイミングで表明されたのだろうか。
「いや、絶妙なタイミングだったと思いますよ」
とは、先の宮内庁関係者。
「菅総理は、6月中旬のG7サミットで各国首脳による開催支持を取り付け、開催を決定的なものにしました。もしも、それ以前の、開催か中止かの議論が揺れている際に今回の発言があれば、『天皇が中止に誘導した。これは政治的発言だ』との批判が今回よりも確実に高まっていたでしょう。しかし、次の長官会見を待っていたら、開催の直前すぎて、遅きに逸した印象を与えかねません。だから、“絶妙”だったんです」
東京五輪とパラリンピックの名誉総裁として開会宣言のおことばを述べる陛下は、ここしかないというタイミングで、感染拡大を不安がる「国民とともにある」ことを示されたのだ。
開会宣言の文言は、オリンピック憲章の中で定められている。1964年の東京五輪に倣うと、《第32回近代オリンピアードを祝い、ここにオリンピック東京大会の開会を宣言します》となる。
「開会宣言には開催を“祝う”ニュアンスが含まれている。国民の間から根強い開催反対の声があがる中で、陛下は開催を祝わなくてはならない立場なのです。一方で、ウイルスの感染拡大を誰よりも強く危惧されてきたのが陛下でもある。自らが祝って開催を宣言した大会によって、国民の間に感染が広がることを強く憂慮されているのでしょう」(前出・宮内庁関係者)
※女性セブン2021年7月15日号